本編
□春景色
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「…大きすぎる」
アルバが眉を潜めて言う。ウィズは無機質な箱と、そこから先に伸びた線を手に取りその魔力石に接続する。
箱から薄いディスプレイが表れ、文字を浮かび出す。続けてウィズは宙に、光の線で区切っただけのキーボードを出現させ、入力する。
「魔晶器自体、魔力石に埋もれている。想定済み。こちらからの接続で、魔晶器の場所を割り出す」
ウィズは文字を打ちながら答える。更に、リシアに機器を指示し、リシアがそれを手に取ると箱に接続させる。
「魔力動態検出完了。アルバ!」
しばらくの間をおいてウィズは言うも、突然呼ばれたアルバは驚く。だが、すぐに自分のやるべきことを理解し、魔力石の前に立つ。
「『一時断線』…というワードでいいんですよね?」
「ん。打ち込む場所は、青く光る場所」
ウィズは、キーを操作し、魔力石を部分的に青く光らせる。
アルバはそこへ左手を伸ばし、左から右へ腕を動かす。術を唱えるときに脳裏に浮かぶ文字がアルバの手から表れる。古代語だ。
三行ほどの文章を出現させると、巨大な魔力石の光は止まり、その闇はマバルアの上へ上へ行き、マバルア全体を包む。
粒子の雨は止み、生命が途絶えたようにも見える。その間にウィズはリシアに取らせた別の機器を箱に接続し、キーを操作してアルバに告げる。
「『新規シグナルに接続』…次も青く光った場所」
「…分かりました!」
アルバはまた左手を魔力石にかざし、闇のなかで青く輝くところに古代語を打ち込む。今度は八行程だ。
それを打ち込むと、ウィズのディスプレイに『魔力石をセットしてください』と警告表示される。先ほど接続した機器を、ウィズはアルバに手渡す。
「無理せず、少しずつ魔力を流し込む。持つだけ。詠唱不要」
アルバは頷き、その機器を手で包むようにして待機する。ウィズは再びキーを操作する。
警告文は消え、アルバが一瞬揺れる。アルバは大きく息を吐き、集中して硬直する。
巨大な魔力石が輝くことはないが、ゆっくりと幹に淡い光が昇る。
しかし、それは千年樹太い所にだけ留まり、全体には行き届かない。
「マバルアの暴走停止、生命維持装置接続完了。アルバの魔力が尽きる前に、シロガネ」
「よし、きた!」
黒いカーテンの術をとき、シロガネは指を鳴らして青い光の羽を出現させる。