るるりら。
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「ごめんね、遅くなって」
「晃ちゃんっ!」
「晃先輩!」
部活が始まって三十分。
今までどこかへ行っていた晃が帰って来た。
何人かの部員が気付き名前を呼ぶが、一番早いのは青葉。
素早く晃のもとへと走ってきた。
「晃ちゃんっ、大丈夫?」
「何が?」
「……あ、いや…色々」
「色々?よく分かんないけど、告白されてきちゃった。羨ましいでしょ」
「………………うん」
にしし、と笑う晃に不安げな表情を向ける青葉。嘘つき、とでも言っているようだった。
何故なら、ほんの少しだが晃の頬にかすり傷があった。それは本当に小さくて、いつも見ていないと分からない傷。
器用な晃はそんなところに傷を残したりしない。
何があったの……?
と聞きたい衝動にかられるが、ここで聞いても何も変わらない気がする。
色々考える青葉を不思議に見つめながら、それよりと一言言ってぎゅっと腕を引っ張った。
わっ、と青葉が声を上げる。
「この傷は何かな?」
にっこりと微笑む晃から、黒いものが見え隠れ。
やばい、と察知するのに時間はかからなかった。
「……カッターで切っただけ」
「へぇ、こんなに複数の場所を青葉が切ると?」
「…考え事してたから」
「…………そう。それはいけないね」
嘘はついてない。と心の中で呟きながら晃を見つめる。
あぁ、ごめんね。
ぎゅっと、握る手に更に力を加える。
「……無理しないでね」
「!晃ちゃん…。それは、こっちの台詞…」
「え…、」
「喧嘩?それとも誰かにやられたの?大人数でしょ?」
「青葉………」
瞳を潤ませ、掴まれていない方の腕で晃の傷を撫でる。
ごめんね、ごめんねと心の中で呟く。何が悪いかも分からないまま。
晃の目が開かれた。
「大丈夫だよ、晃ちゃん」
「…………………」
「私が守るから」
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