るるりら。

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今自分が頼れるのは兄しかいない。
そう考え必死に訴えるも、信じない…というより、何がなんだか理解できない様子だ。

青葉はもう一度、力強く握ってシワが出来た紙を読んだ。




〈やあ。
この紙を読んでいるということは、無事にトリップ出来たようだね。
世界は君達が望んでいた通り【テニスの王子様】だよ。
君達の元いた世界に戻ることは恐らくもう無いだろう。
未練を残さない為に、君達の家族はもちろん、特別仲の良かった人物は皆この世界の住人として存在している。
しかし存在してはいるものの、トリップした訳ではない。
トリップしたのはあくまで黒崎青葉、鮎川琴音、桐谷晃の三人だけ。
元の世界では、君達はすでに元から存在しないものとしてある。
安心して。家族や友人は、ちゃんとした人間だ。
話は変わるが、君達はこの世界で転入生として氷帝学園に通ってもらう。
制服はそれぞれ用意してあるから、他のものは自由にしてくれ。
なお、今回は紙だが、これからは君達の携帯へ連絡させてもらう。
それでは、選ばれし三人よ、しかと楽しんでくれ〉



何度読んでも変わりはしないその長ったらしい文に、甚だ嫌気が差す。
書いてあることは恐らく本当なのに、信じたくない。という気持ちが青葉を支配した。

すると固まっていた青葉が心配になったのか、兄が話しかけてきた。



「青葉、大丈夫か?てかもうそろそろ着替えないとヤバいんじゃないか?今日始業式だし」

「………………は?…お兄ちゃん…私、今何歳?」


元の世界では自分は中学3年生だった。しかも始業式はすでに終わっている。
それなのに今日も始業式?ましてや転入?
一体どうなっているのか。
どうやら元の世界とここの世界で少しばかり時間の流れがずれているらしい。



「14だよ。可愛いなぁ青葉は」


はにかみながら返事をする兄に、本来なら大丈夫?と若干引き気味の顔を向けるのだが、なんせ今は自分の方が大丈夫?な訳で、煮え切らない気持ちが広がった。

そんな兄に促されるまま、制服を着替えに自分の部屋へと戻って行った。












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