るるりら。
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渋々クローゼットを開き、カッターシャツを羽織る。
白のシャツにピンクのカーディガンを着るのがいつもの制服姿だが、なんせ今日は始業式の様だから、氷帝用のブレザーを着込んだ。
春で少し肌寒い為、調度良い。
「…サイズぴったりなんだけど」
調度良いのは温度だけではなく、サイズがすべてぴったりだった。
ここまでくると少し怖いが。
ブルーのカラコンを入れて一息ついたとき、タイミング良く兄の声がかかった。
「青葉ー、迎え来てるぞー!」
「っえ、迎え?」
まさか…!
自分を迎えに来る人物など、あの二人しか思い浮かばなかった。
鞄を持ってさっきの様にドタドタと階段を降り、バンッと玄関を開けた。
…あぁやっぱりか。
目の前にいたのは青葉の予想通り琴音と晃だった。
変わらぬその表情に、少しばかり安堵した。
「行っといで、青葉。彼氏作っちゃ駄目だぞ」
「…、お兄ちゃん、弟達は…」
「アイツらは後で俺が連れてくから大丈夫!」
「…ありがと。行ってきます」
いつもなら言わないが、元の世界となんら変わりのない兄の笑顔が、なんだか嬉しかった。
バタン、と扉を閉め外に出るや否や、青葉は二人を見つめた。
さぁ、本題に入ろうか。
「………紙、見た?」
「うん、もちろん」
「ヤバいよね!氷帝だって!しかもウチら転入生でしょ!ぎゃぼっ」
「空気読めやこらぁ!」
「いやーんトリップしても素敵なあーちゃん!」
「黙れ!」
「はい落ち着いてー」
トリップしても会話は変わらないようだ。
コホン、と咳払いをしてから、真剣な表情に戻った。
青葉と晃だけ。
「取りあえず、あたしらがトリップして、氷帝学園に転入するのは間違いないね」
「やっぱり、本当にトリップしたんだ…」
「信じがたいけどね。あれこれ考えるのは後でも出来るから、まずは学校に向かおうか。初日に遅刻は嫌だし」
「…だね」
「りょーかいっす!おら楽しみ過ぎてヤバいんですけどどうすれば良いですか先生!」
「先生誰よ」
「晃ちゃん!」
「またあたしなんだ」
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