るるりら。
□05
1ページ/6ページ
人の愛とは、
時に優しくて
時に切なくて
時に――
醜い。
青葉達、そしてレギュラー達は、ある変化に気付いていなかった。
それは本当に小さな変化で、その変化を起こしている人物にしか分からない程。マネージャーになって数日間、周りも三人がマネージャーということを認識し始めた。
そんなある日その変化は、突然現れる。
ガララ、とA組の教室を開ければ、今までと違う。そう感じる空気が立ち込めた。
入学して二週間。
今だ完全にはクラスに馴染めていない青葉は、無言で席に向かった。
――が、到底座れる状態ではなかった。
机にはウザい、調子に乗るな、などの暴言がペンで書かれていた。皆に見えないように、上ではなく中に。
更にはバラバラと散らばった教科書が。
その中の一冊を手にとって開けば、つつーっと青葉の指が切れた。
真っ赤な血が指をつたり、机に落ちて広がる。
「……………痛」
痛いと流れで言ってみる。
そうすればほら、クスクスと笑う女子。
それは本当に小さくて、数人にしか聞こえないものだったが、青葉にはしっかりと聞こえた。
ふっ…と自虐的に微笑むと、何も言わずに教科書に挟まったカッターの破片を一つずつ取っていく。
その間にもプツ、プツ、と指の切れる音が響くが、青葉はいつもと変わらない表情。
一通り作業が終わると、何事もなかったかのように席についた。
と、タイミング良く跡部が教室に入ってきた。
「青葉、早かったじゃねぇか」
「……別に。跡部くんが遅いだけだし」
「あーん?…ふっ」
生意気。そう言っていつものように跡部が青葉の頭を撫でようとした―が、パシッ!とその手を払った。
「気安く触らないで」
その声は、瞳は、いつもより冷たく、凍て付く感覚を思わせた。
気安く触らないで。なんていつも言われているのに。
だけど、そう言いながら大人しく撫でられていた青葉は、今ここにはいない。
手を払われることが、こんなに寂しいことだったのか。
跡部は戸惑い、それ以上青葉に何も言えなかった。
.