るるりら。
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―チュンチュン、
小鳥の囀(さえず)りが聞こえる。カーテンから僅かに差し込む光に、開きかけた瞼が閉じる。
あぁ、今日は晴れか。
なんて頭の片隅で考えながら、ゆっくりと体を起こした。
…………は?
今だ眠たそうにしていた青葉は、そこでやっと我に返った。
おかしい。何故、朝?
昨日……いや今日は、琴音と晃の三人で歩いていて…猫に会って……そうだ、猫だ!
ドタドタと急いでカーテンを開けばあんなに綺麗だった夕焼けはどこにもない。
あるのは一面青、青、青。それは正しく飛び切り快晴な朝で。
青葉は目を疑った。
下からは兄の自分を呼ぶ声。兄が、いる?
あぁそうか、あれは夢だったのか。きっとあの喋った猫も、トリップだの言っていたのも、自分の夢なのだ。
そう自己解決した青葉は、実に晴れやかな顔でいつもの様にクローゼットを開けた。
―が、いつものクローゼットとは違う。明らかに違う。
そこにあったのは、見知らぬ制服。茶色のブレザーで何とも可愛らしいが、これは自分が通っていた制服ではない。
元もと着崩していた青葉だが、流石に自分の学校の制服を忘れた訳ではない。
青葉の顔が、また曇り出した。
よろよろと後ろへ歩いて行けば、机に当たった。
ちらりと机の上を見て、青葉は人生最大の溜め息をついた。
「〜〜っ、何なのこれは…!!」
悲しみの混じった小さな小さな悲鳴は、誰にも聞こえはしない。
プルプルと震えた手で机の上の物…一枚の紙を掴んだ。
律儀に封筒に入れたりなんてしない。そこがまたイラつかせるが、我慢しながらしっかりと文を読む。
ほんの数秒の出来事だった。
文を読み終えた青葉は、持ち前の脚力でバタバタと階段を降り兄の所へ向かった。
「お兄ちゃんっ!!」
「青葉!そんなに急いでどうした、ご飯は出来てるぞ?」
「お兄ちゃん、ここは何処!?」
「え、青葉?」
信じられない。
まさか、本当にトリップしていたなんて。
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