戦国無双短篇ノベル
□セールスポイント
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からっ風が吹きすさぶ季節。
時に落ち葉以外の物が宙を舞います。
石田三成の城内でも−−−−−−−−
どこからともなく風に乗って紙きれが飛んでいる。
その紙きれは生き物のようにせわしく舞いながら風の赴くまま行く先を変えているがやがてある松の枝にひっかかり今宵の宿を決めた。
それが城主、庭を歩いていた三成の目に止まった。三成は松の枝に張り付いた紙きれに手を伸ばした。
たやすく取れそうなものだがあとわずか届かず指先が紙きれをかすめる。
そんなどうでもよさそうな紙きれごときに三成がむきになるなど考えにくいが、なぜか今は意地になっている。
俺にできないことなどない!といわんばかりに果敢に挑戦は続く。
あと少し、そうだ、もう少し、届け!
三成の執念が実りようやく紙きれを指先が挟んだ。
よし!!
三成は紙きれごと勢いよく手をひっこめたら。
ビリッ
あろうことか着物の袖を松の枝にひっかけていた。
「これは!俺としたことが。さて、どうするかな。」
破れた袖に苦笑いがこぼれた。
「殿、その袖、どうなさったんです?」
そこへやってきた左近に尋ねられても罰の悪い三成はいきさつを話さない。
紙きれへの子どもじみた好奇心とわずかばかりの意地から袖がこうなったなどとは。
「とるに足らんことだ。それより人目につく前にこの袖、なんとかならぬものか?」
めったに人に頼らず自分で解決してしまう三成が珍しく自分を頼ってきた。左近はチャンスだと思った。
「大丈夫。さて、本気出しましょうか。」
左近は余裕の笑顔を向ける。
「左近、何をする気だ?」
「まあ、見ていてくださいな。」
左近の自信に満ちた面持ちに釘付けになる三成。
すると左近は懐から針と糸を取り出すと三成のほころびを縫いはじめた。
「殿、すぐ済みますからしばらくじっとしていてくださいよ。」
鮮やかな手つきで繕われていくほころび。
見る見る間に三成のひっかけた袖は元通りになった。
「すまぬ、左近。しかしお前にこんな一面があったとはな。」
「どうです?戦以外でも左近は使えるでしょう?
もし戦乱の世でなくなってもちゃんと雇ってくださいよ。左近がいたら殿は公私ともに困ることはありませんぜ。」
肩を震わせ豪快に笑う左近に三成は顔色を変えずに答えた。
「そのようだな。頼りにしている。」
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三成が袖を破いてまで手に入れた紙きれ、気になりません?
実はここだけの話、三成は自分で描いた4コママンガが風に飛ばされてしまってその行方がとても気になっていたんです。ダレかに見られないうちに回収しなければとね。
それが風に乗ってとんでるのをたまたま見つけたので取り戻すのに必死だったんです。三成、お茶目だーっ。
ばらしたこと、三成には内緒ですよ。