long小説
□真田十勇士〜真田幸村と上月佐助〜一話
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それはきっと、運命の出会い。
秋も深まりだしたある日のこと。今日は快晴。
うん、いい日和だ。俺は地を蹴って太い木の枝へ飛び、空を見上げて胸いっぱいの新鮮な空気を吸った。
「おかしいでござるな。確か、この辺に逃げこんだはずなのだが……」
その声は突如、息を吐き出そうとした瞬間に聴こえてきた。
俺が下を見ると、「うーむ」と目を細め、茂みを見渡す人が立派な馬に乗っている。
「ふむ……」
何かを探しているのか、その人は仕方ないとばかりに手綱を引き、馬の向きを変えた瞬間、猪が急に飛び出して来た。
そのことに驚いた馬が、前足を高く上げて嘶(いなな)いた。
「落ち着け! 落ち着くのだ!」
ドウドウと言いながら、馬を落ち着けさせようと首を撫でつづけている人に「大丈夫?」と、俺はつい、いきなり声を掛けてしまった。職業病なのか?
で、そのお方は当然おどろいたのか、猫のようにビクッ! としながら取り繕うように「あ、ああ、すまぬ。この里の者か? 猪を追いかけてここまで来たのだが、今また逃げられてしまってな」と言った。
「あー、もしかして、あの猪?」