long小説

□真田十勇士〜真田幸村と上月佐助〜一話
1ページ/10ページ




それはきっと、運命の出会い。





 秋も深まりだしたある日のこと。今日は快晴。
 うん、いい日和だ。俺は地を蹴って太い木の枝へ飛び、空を見上げて胸いっぱいの新鮮な空気を吸った。


「おかしいでござるな。確か、この辺に逃げこんだはずなのだが……」


 その声は突如、息を吐き出そうとした瞬間に聴こえてきた。
 俺が下を見ると、「うーむ」と目を細め、茂みを見渡す人が立派な馬に乗っている。


「ふむ……」


 何かを探しているのか、その人は仕方ないとばかりに手綱を引き、馬の向きを変えた瞬間、猪が急に飛び出して来た。
 そのことに驚いた馬が、前足を高く上げて嘶(いなな)いた。


「落ち着け! 落ち着くのだ!」


 ドウドウと言いながら、馬を落ち着けさせようと首を撫でつづけている人に「大丈夫?」と、俺はつい、いきなり声を掛けてしまった。職業病なのか?
 で、そのお方は当然おどろいたのか、猫のようにビクッ! としながら取り繕うように「あ、ああ、すまぬ。この里の者か? 猪を追いかけてここまで来たのだが、今また逃げられてしまってな」と言った。


「あー、もしかして、あの猪?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ