long小説

□真田十勇士〜真田幸村と上月佐助〜4
1ページ/8ページ



 まあ俺達は分身で、似ているどころかソックリそのままの自分を、何人も出せるんだけど。と、心中で突っ込みつつ、湯を汲んで旦那の背中に掛けた。


「はい、おしまい。じゃあ旦那、もいっかい湯船に入って温まろっか」


「ああ、そうだな」


 旦那がそう言って椅子から立ち上がった瞬間、それは起こった。
 ツルッと足を滑らせた旦那は、無意識で何かを掴もうと体を少し反転させ、自然な流れのまま前向きになり、俺の方へ。〈嘘だろー……〉そんな心の叫びも虚しく、ドッスーンという音とともに、旦那と俺は盛大に床へと倒れた。


「アタタ……」


 俺がゆっくり目を開けると、目の前には旦那の顔がチョー近く……。要は押し倒されちゃったのね、俺。一瞬かたまっていた旦那は、ワタワタしながら飛び起きると、手を差し伸べてきた。


「大丈夫か!? 頭は打たなかったか!? 佐助」


「うん、大丈夫だよ。旦那も大丈夫?」


「某のことなどよい! 本当にすまないでござる!」


「いいよー。気にしなくて」


 と、俺は言ったんだけど、風呂から上がったあと部屋で涼んでたら、旦那が水菓子を持って俺の部屋へ詫びに来てくれた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ