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□真田十勇士〜真田幸村と上月佐助〜4
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まあ俺達は分身で、似ているどころかソックリそのままの自分を、何人も出せるんだけど。と、心中で突っ込みつつ、湯を汲んで旦那の背中に掛けた。
「はい、おしまい。じゃあ旦那、もいっかい湯船に入って温まろっか」
「ああ、そうだな」
旦那がそう言って椅子から立ち上がった瞬間、それは起こった。
ツルッと足を滑らせた旦那は、無意識で何かを掴もうと体を少し反転させ、自然な流れのまま前向きになり、俺の方へ。〈嘘だろー……〉そんな心の叫びも虚しく、ドッスーンという音とともに、旦那と俺は盛大に床へと倒れた。
「アタタ……」
俺がゆっくり目を開けると、目の前には旦那の顔がチョー近く……。要は押し倒されちゃったのね、俺。一瞬かたまっていた旦那は、ワタワタしながら飛び起きると、手を差し伸べてきた。
「大丈夫か!? 頭は打たなかったか!? 佐助」
「うん、大丈夫だよ。旦那も大丈夫?」
「某のことなどよい! 本当にすまないでござる!」
「いいよー。気にしなくて」
と、俺は言ったんだけど、風呂から上がったあと部屋で涼んでたら、旦那が水菓子を持って俺の部屋へ詫びに来てくれた。