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□夕陽
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背中に抱えていた槍を草原の上に置いた幸村は、夕陽が差し迫る茜色の空を見上げた。
「綺麗だな。そうは思わぬか? 佐助」
「綺麗だねー、いやほんと」
佐助も手を翳して空を見上げた。
「……しかし、不安にも思うのだ」
「何を?」
「この戦に勝てるのか、と……。そう思うと不安になり、それに押し潰されそうになる自分がいるのだ……どうしてよいか解らぬほどに……」
「旦那……」
「佐助は、このような思いにとらわれた時、どうしている?」
幸村は佐助の目を見て言った。
「そうだね、俺様はほら、深く考えないようにしてるから」
「某も、佐助のようになれればな」
幸村は再び、夕陽を見つめた。
「だーんな」
「さ、佐助っ!? 足音と気配を消して近寄るなとあれほど……」
「旦那忘れてない? 俺様は忍なのよ。気配と足音を消してなんぼでしょー?」
間近で、そう佐助に言われた幸村は、心なしか顔が赤いように見える。
「だーいじょうぶ! 旦那にはお館様と、この俺様が付いてるんだから!」
そう言って、佐助はウィンクした。