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□真田十勇士〜真田幸村と上月佐助〜二話(作成中)
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姉ちゃんは振り返って、俺に微笑んだ。それは久しぶりに見る、俺の前でしか見せない年齢相応な笑顔だった。
「うん……まあ、俺なりに頑張るからさ。そんな心配しないでよ」
「……でも本当は『よかった』なんて間違っているのかもしれない。けれど、私達が生きる道はそこにしかない。よく、時代が忍を求めているといったことを聴くけれど、時代ではなく、本当は戦が、その戦を行う主君が、求めているだけ……。佐助。太平の世に生まれていれば、私達の人生はどんなものだったのかしらね」
姉ちゃんは自分への問いを俺に投げかけるかのように呟いた。
「……太平なら、全然ちがう人生を歩めたかもしれないな。普通の人生を。俺も、姉ちゃんも……そして他の忍達も。というよりは、忍自体が派生しなかったと思う」
「……そうね。さあ、もう見送りはここまでいいから真田様の元へ行って差し上げなさい」
「うん。……じゃあ、また何かあったら文送るから」
「ええ。じゃあ、身体には気をつけてね」
姉ちゃんはもう一度、振り返って俺を見ると、夜の闇へ溶け込むように消えて行った。
「……」