客間【アランさん他…の夢】
□From mistakes…
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★From mistakes…★
私はアメミヤ ヒナ。
女優業をやっている。
女優と言ってもまだまだ主役を張れる大女優ではないけれど…。
たまたま街で買い物していたらスカウトされてこの業界に入った。
特別にキレイ、可愛いというわけではなく、本当に普通の女優が欲しいからとスカウトされた。
(それってちょっと複雑よね…;)
スタイルも十人並みだし、背も一般女性より低い。
始めはCMのエキストラみたいな役だったり、雑誌のお仕事が多かったから
私なんかで女優さんをやっていけるのかな?と思ったけど…。
今は年何回かのドラマの撮影に声が掛かる程度にまではなった。
CMもメインに起用して貰えるようになってきた。
今日も仕事先に向かう為、飛行機に乗っている。
飛行機…初めての海外での映画の仕事。
端役だそうだけど、もの凄く緊張する…。
英語、ちょっとしか話せないのに大丈夫なのかなぁ…。
それにそれに!今回の相手役の男性はなんと……
…あのアラン・リックマン…。
このお話を頂いた時…
私はお風呂で半身浴中で、そこでマネージャーからの電話を取った。
『ヒナ!今度の仕事は海外よ!しかもお相手はあのアラン・リックマンさんだって!』
海外!?凄い!こんなお仕事初めて…♪
え?ちょっとまって今マネージャー何て言って……
…お相手が……アラン…リックマンさん…?
え?
嘘??
初めてアランさんを知ったのはハリー・ポッターのスネイプ先生役。
原作を読んでスネイプ先生を好きになり、映画の中のアランさんを観て正にはまり役だと思った。
それから毎年ハリー・ポッターが上映されるのを楽しみにしていた。
お話ももちろん大好きだけど、やっぱりスネイプ先生…いや、アランさんに会いたかった。
そして好きになってから何年も経った今、アランさんに会えるなんて…。
しかも街でばったり偶然!とか、彼のお芝居を見に行くとかじゃなくて一緒にお仕事だなんてっ!
『ちょっと?ヒナっ?!大丈夫?まさかお風呂で溺れてるんじゃ?!』
「…えっ、ああ大丈夫!アハハー」
『まったく…ちょっと抜けてるんだからー』
「ね…ねぇマネージャー?!相手役の人って本当に…あの英国俳優のアランさん?」
『そうよ!ほらあのハリー・ポッターのスネイプ先生の……って、あ!ヒナもしかしてこの仕事嫌だった?』
「え?!」
『私が勝手に取り付けて来ちゃった仕事だし…それに言っちゃ悪いけどお相手かなり年上だものね…』
「う・ううん!嫌とかじゃないの!超大物俳優さんとお仕事なら頑張らなくちゃ…って思って!」
『それは大丈夫よ!今回はアランさんからのご指名だもの』
「えっ?!どういうこと?」
『前にヒナ、海外向けの〈日本へ来てね〉のCMやったでしょ?それを見たんだって』
「え…アランさん本人が?」
『そうそう。それで是非にって。英語も出来ないって言ったらそれでも良いって。だからそんなに緊張する事無いわよ』
「う、うんそう…分かった頑張るね」
『そういってくれると有難いわ!じゃあまたね』
それからどのくらい浴槽の中でボーっとしていたのか
ヒナは気付いたらもうフラフラにのぼせていた。
あの日から今日、飛行機に乗り込むまでヒナはマネージャーに会う度に本当の事なのかと何度も問い詰めた。
「まさかドッキリじゃ…」
『あんたみたいなフツーーーの女優さんになんかドッキリは来ないから!』
カラカラと笑うマネージャーの横顔を複雑な顔で見つつ、ヒナの心臓はバクバク、手は汗でびっしょりと濡れていた。
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