TOX-B
□相思相愛
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*R18です。18歳未満(高校生)の方は、閲覧をご遠慮下さい。
ジュードと仲間として以上に―――所謂恋人として思いが通じ合ったのは、旅が終わってからのことだった。それからしばらく経つが、アルヴィンが最近やっていることといえば仕事、仕事、ジュードに手紙を書く、仕事、ジュードから返事をもらってにやにやする、また仕事、仕事、仕事、手紙を書く、仕事―――…リーゼ・マクシアとエレンピオスを飛び回っている自分と、源霊匣の研究のため滅多にイル・ファンを離れないジュードとでは、なかなか顔を見たり声を聞いたりすることができない。
正直飢える。
とても飢える。
クソ飢える。
「あぁ〜……」
「アルヴィン……変な声出さないで下さい。ご飯、まずくなります……」
小さな四角いテーブルを挟んで向かい側。そこに座って食事をしていたエリーゼはその手を一旦止め、半眼でアルヴィンを見ながら呆れた様子でため息をついた。
確かに、機嫌よく食事をしている隣で辛気臭い顔されるのは誰だって嫌だろうな。俺だって嫌だわ……。アルヴィンは反省すると、頬杖を突いてへらりと笑った。
「もっと優しくしてよー、エリーゼ姫。俺寂しいんだよ〜」
「イヤです。」
「イヤ!? お、おいおい、そんなあっさりと……」
つっけんどんに言い放ったエリーゼはアルヴィンを無視して食べかけていた料理を自らの口へと運び、もぐもぐすると幸せそうに顔を綻ばせた。
世界各地を飛び回っていると言ってもデタラメにというわけではなく、それなりに規則性はある。中でもリーゼ・マクシアの流通拠点となっているカラハ・シャールに立ち寄る機会はやはり多く、今はもう立派な領主となったドロッセルに挨拶するついでに、エリーゼを連れ出してはこうして食事等を共にすることが多かった。最近できたのだというカフェのテラスで、晴れた日に大風車の方から吹いてくる清かな風を浴びながらの食事はまた格別だ。
「そんなにジュードに会いたいなら、会いに行けばいいじゃないですか」
次はデザートの器に手を伸ばしながらエリーゼが言った。相変わらず小さな体のわりによく食べる。
「そうしたいのは山々なんだけどなー……ほら、俺人気者だからさ。あっちからこっちから引っ張りだこで忙しいんだよ」
人気者だからというのは冗談だが、仕事が忙しいのは本当だ。始めたばかりの頃は上手くいかないことの方が多かったが最近はそれもようやく軌道に乗ってきたところで、まだしばらくは多忙な日々が続きそうなのである。
「少し、お休みできないんですか?」
「たまにはそれもいいかも……でもジュードに気を遣わせるのは嫌だからさ」
もちろん実際にはどうかはわからないが、自分が仕事をほっぽり出してまで会いに行って、ジュードは喜ぶのだろうか。これが女の子なら「まあ嬉しい」なんて言ってもらえるかもしれないが、ジュードは男だし性格からして逆に申し訳ないと思わせてしまうのではないか。そんなことを考えているうちに仕事はますます忙しくなって、今日に至る。
「相変わらず変なとこ気にしいなんですね」
「ハァ……やれやれ、エリーゼ姫は随分とお口が達者になりましたね……」
「もう、ティポには頼らないって決めましたから」
「……そっか。偉いな」
はっきりと決意を口にするエリーゼに感心し、それを素直に褒めてやると、彼女はぽっと頬を染めてはにかんだ。本当に愛らしいと思う。ジュードに対するものとはまったく別物ではあるが、アルヴィンは彼女に対しても確かな愛情を抱いていた。
エリーゼはあまり自分に懐いていないものだと、あの旅の最中は思っていた―――自分の所業を考えればそれが普通なのだ―――が、世界の在り方を賭した最終決戦を前に彼女は「これからもお友達でいてあげますね」と言った。そう、エリーゼは最初からずっと、友達でいようとしてくれていたのに、自分はそれに気付こうとしなかった。
遅くてもいい。これからはうんと大切にしようと決めていた。
「アルヴィンも……偉いですよ」
「え、そう?」
意外な言葉を掛けられてアルヴィンが首を傾げると、エリーゼはこくりと頷く。
「みんなといつ再会しても恥ずかしくないように、一生懸命ですよね」
「……そっか、な?」
「はい。でも……あんまり、無理はよくないですよ?」
「ん……サンキュ。」
お礼を言うと、エリーゼは立ち上がってアルヴィンの方へと身を乗り出し、額にちゅっと小さなキスをしてくれた。彼女の元気が出る特別なおまじない。
本当を言うと大の男がこんなことをされるのはちょっぴり恥ずかしいのだが、それ以上に彼女からの無垢な愛情はとても心地良かった。
「アルヴィンってばまた浮気してる」
不意に誰かが言った。その聞き覚えのある声に驚いて振り返ってみると、なんとすぐそこにジュードの姿があるではないか。
「! な、なん……ジュ―――」
「ジュードー!!」
「痛ぁッ!? ちょ、お姫様ヒドい! ずるい!!」
ぽかんとするアルヴィンを突き飛ばしたエリーゼが真っ先に突っ込んで行くと、それをしっかりと抱き止めたジュードはそのままふわりと彼女を持ち上げながら嬉しそうに笑った。
「エリーゼ! 元気にしてた? 学校楽しい??」
「はい! みんな仲良くしてくれますっ」
きゃっきゃっとまるで女の子同士のようにはしゃぎながらその場でくるくると回った後ようやくエリーゼを地面に下ろし、ジュードは彼女の頭をよしよしと撫でる。さっきのを浮気だとか言えないくらい、この二人も相当の仲良しだ。
「ジュード、お前ここで何してるんだ?」
「アルヴィン、ここへ来る前にカン・バルクでローエンと会ったでしょ? 僕もガイアスに謁見しに行ってて、そこでローエンからアルヴィンが少し前にカラハ・シャールに向かったって聞いたから」
「え、じゃあ俺を追い掛けて来たのか?」
「うん。アルヴィン、忙しいんでしょ? 僕の方から会いに行こうと思ってたんだ」
「そう、だったのか……」
今まで会いに行くことは幾度となく考えていたアルヴィンだが、ジュードの方から会いに来てくれるなど一度も想像したことがなかった。
どうしよう。わざわざ会いに来てくれたなんて、すごく嬉しい。
それなのに何と言って良いのかわからず後ろ頭を掻いていると、エリーゼがくすくすとおかしそうに笑い、まるでティポのような口調で言った。
「アルヴィン照れてるー」
「なんだとぉー!?」
「きゃー! ジュード、アルヴィンがいじめてきます!!」
「うわわわ……! ちょ、こら、二人ともやめてっ」
さっとジュードの背後に隠れたエリーゼごと、思いっきり抱き締めてやる。
エリーゼと二人掛かりでジュードを揉みくちゃにして、久々に大きな声で笑った。
***
「ジュードと二人っきりにしてあげますね」と、アルヴィンにそっと耳打ちしたエリーゼは一人でさっさとシャール家へと帰って行ってしまい、その後はジュードとデート―――なんて気の利いたものではないが、たわい無いお喋りをしながら買い物をしたりして夜までの時間を過ごした。
町に着いたときにはもう宿が満室だったとジュードが言うので自分が押さえておいた部屋で一緒に泊まることにしたのはいいが、一人部屋なので当然ベッドが足りない。さてどうしようかとアルヴィンが考えていると、それを見ていたジュードがおずおずと切り出した。
「しないの?」
「? 何を??」
「えっ」
何故かジュードが驚いたような声上げ、真っ赤になる。
「いや、だからー……するなら、ベッドひとつでも、いいかな〜……とか? あ、あはは、僕何言ってるんだろ」
「あ、ああ……」
そういう意味か。素のままでボケてしまい、アルヴィンもばつが悪かった。自分だって昼間こっそりと手を繋いだりしたときにそういうことをちょっとは思っていたのだが、ジュードも長旅で疲れているだろうに無理させては駄目だと忘れることにしていたのだ。
「アルヴィン……? あの、嫌なら別に―――」
「いやいやいや喜んで!!!!」
「よ、喜んでって……」
これまたジュードの方から誘ってくれるなんて思っていなかったと喜びを噛み締めていると、とんでもない勘違いをしたジュードがしょんぼりとしながら離れて行こうとするので慌てて抱き付き、その勢いのままベッドに押し倒す。
「ちょ、ちょっと待ってよ。するのはいいけどシャワーくらい浴びてから……っ」
自分の下から這い出ようとするジュードの腰をずるずると引き摺り戻しながら、アルヴィンは笑った。
「いいっていいって、気にしないから。」
「僕が気になるの!」
言い出しっぺのくせに往生際が悪いジュードの服の襟を掴み、露わになった白い項に口付ける。途端に小さな悲鳴を上げて大人しくなった彼の耳の付け根までをゆっくりと舐めて、そこに小さな痕を残す。
ジュードの肩を掴んで仰向けにひっくり返すと、まだ諦めずに「僕汗くさいよ」とか何とか言う口をキスで塞いだ。大人から食うてやるとからかわれた子供のような、その拙い言い訳の仕方がとんでもなく可愛くて興奮した。我ながらちょっと危ない。
深いキスは相手をその気にさせるための常套手段だ。絶対にこれを疎かにしてはならない。丁寧に、丁寧に、余すところ無く味わってから口を離す……ジュードはもうひとつも文句を言わなかった。
それは情事に耽り始めてからどれくらい経った頃だったか。
「ア―――……ぁ、ああっ! ん、ンぁ……アル、もっとほし、い……」
「おいおい、あんま過激なこと言うなって……」
互いに達したばかりだというのに、ジュードが続きを強請った。子供でもない、そうかと言って大人でもない、どこか危ういその色香に頭がぐらぐらする。
白い首筋に鼻先を近付けると、汗の匂いと共にジュード自身の柔らかい印象を受ける匂いが強く香った。そのまま首の付け根にそろりと歯をあてがうと、びくりと身を竦ませたジュードがアルヴィンの背に回した手に力を込める。
「ひ……」
わずかに歯を食い込ませると弱々しい悲鳴を上げたが、やめてとは言わない。獲物はただ捕らわれるのを震えながら待っている……そんな感じだった。
「あ……っああぁ!」
不意にぐっ腰を進めて既に熱くとろけている中を抉ると、ジュードが気持ちよさそうに艶かしい声を上げる。気が逸れた、その瞬間を狙って一気に噛み付いた。
「! ア、ぅッ―――…ああァ、あっ!!」
犬歯がぷつりと皮膚を破り、口の中に血の味が広がる。ジュードが身を捩るのを押さえつけて、アルヴィンは衝動のままに何度も何度も中を突き上げた。
「ア、ル……うっ、ぁ……アルヴィン……!」
「ジュード……!!」
「あ、ァッ! いや、も……っそ、そんなにしちゃ―――〜ッ!!!」
ダメという言葉は声にならず、過ぎる快楽に耐えきれずアルヴィンの背中に爪を立て、特有の長い絶頂感に浸りながらジュードがまた淫を吐き出す。その表情は恍惚としており、息がひどく熱かった。
「はっ、ぁ……あ……」
「ん……だいじょうぶか? ジュード」
「う、ん……」
アルヴィンが中に出したことにも気付いていない様子で、ジュードはせわしなく胸を上下させている。それでも大丈夫かという問い掛けに頷いて答えると、彼はアルヴィンの顔に触れて薄く笑った。
「まだ、したい?」
「じょーだんだろ。」
「はは、冗談だよ。これ以上したら僕壊れちゃう……」
そう言うと、ジュードは大きく息をついて目を伏せる。黒い睫が、ジュードの白い頬に濃い影を落とした。
「こ、壊れちゃうって言い方どうなの……だいたい、そっちがもっと〜とか煽るからだろ?」
「う……」
今更恥ずかしがって頬を染めたジュードは、そそくさと顔を背けてしまった。その拍子に剥き出しになった彼の首筋には自分の歯形がくっきりと残っている。アルヴィンは思わず苦笑しつつ、まだ生傷の状態のそれに舌を這わせた。
「いっ、た…―――あッ! ちょ、そういえばさっき噛んだでしょ!?」
「ごめん。でもなんかすげー良かった」
「もう……何の話なの、それ……」
変な趣味に目覚めたりしないでよね。なんて、この時はふてくされていたジュードだったが、首筋に残ったその痕はこの後しばらく大事にされたのだった。
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2011/11/16
アルヴィンってジュードから求められることをあまり考えてなさそう…笑
でも求め方も下手くそですね、きっと…だからガブガブしちゃうんだよ。(ぇ)
ジュードだってアルヴィンに長らく会えないと、触れ合いたいと思う!!
ていう話が書きたか、った……えろくする必要あったのかな;
エリーゼはもうちょっと大きくなるまで、アルヴィンとジュードに無邪気に絡みまくってくれると非常に楽しいなあ。。。
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