08/12の日記

00:49
エガオツクル16
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手紙に書いてあった文章は
長いのか短いのかよくわからない

そのくらい書いてあった



大事なキミへ

ごめんね、こんな形になってね

本当はもっと一緒にいたかったよ

でもね、こうするしかなかったの

私ね、この町からね



出て行くことにしたの



ヴィネ
「な、何ィ!?」

大事なもの一つも守れずに
ただ、キミが酷い目に合うのを
見てきただけだった

それが悔しかった

私って、何もできない
この事実だけが嫌だった

だから、逃げてしまったの

町から
自分から
キミから

多分、キミは
私に何かを言いたかったんだよね

なのに、私から逃げて

私が、キミに謝りたかった

でも…これしかなかったの

ヴィネ
「………」

キミ…いや、ヴィネ君へ

ヴィネ君は笑うことが
なかなかできないよね

私は、ヴィネ君みたいに
笑わない人ではないから
ちょっとうらやましいな

だから、約束しよう

いつか

また、会えたら

ヴィネ君のエガオが見たい

その時は、私も笑う

一緒に笑おうね



それと、包み箱に
私がヴィネ君に渡したい物を
入れておいたよ

一つはパーカーだよ
ヴィネ君の好きな色で
片目隠れているヴィネ君のために
片目縫っておいたよ

ヴィネ
「…!?」

俺は包み箱を乱暴に開けた
中身は片目が刺繍された
暗い青緑のパーカー

パーカーを広げてみたら
何やら、白黒チェックの
ネックレスも出てきた

ヴィネ
「これ…マーシャが常に付けていたヤツじゃ…?」

手紙の続きに目を落とす



二つはネックレス
私が常備していた
大事なネックレスだよ

その大事なネックレスを
ヴィネ君に托すよ

もう、これでヴィネ君は私と一つ

これで、ヴィネ君は負けないよ

これからの困難とか苦痛とか

ヴィネ君がそのネックレスを
つけてしまえば、誰にも負けない
[死神]になれるよ



最後になるけど

私は、ヴィネ君のことが好きだよ

会えなくても
見えなくても
傍にいなくても

ずっと好きだよ

だから…笑ってよね

私、待っているよ

ヴィネ君と会える日を



ありがとう

サヨナラは言わないよ

…マーシャ…



ヴィネ
「………なんでだよ」

俺はパーカーとネックレスを取り
外に出ていく

走りながら
黒いフードを捨て
片目パーカーを着て
ネックレスを首に下げ

いつも、俺とマーシャが
一緒に過ごした切り株に向かって

ただ、ただ走った

…少しずつ雨が降りはじめてきた



切り株に来てみたら
その切り株の中心に一つの大鎌

そこに一枚のメモが
一緒ぶら下がってた

書いてあったのは

|ごめんねって|
|謝りたいのは私の方だよ|
|ヴィネ君は悪くないよ|
|大丈夫だよ|

俺は鎌を手に取り
泣き叫んだ

ヴィネ
「じゃあ、俺は…誰のために、笑えばいいんだよぉぉぉ!」



その時、笑えた

自分の無力さに

あぁ、笑うってこういうことか

幸せだった

笑えたんだ

自分は何もできない

出来損ないサンプルという事実が

面白くて笑えた

ヴィネ
「…ヘヘヘッ…アハハッ…クスッ…ヒャハハ…ヒャーハハハハハッ、フハハハハハッ!」

笑ってやるんだ

もう、何もかも






数日後

学校はやめた

新しい学校に入った

どうせ続かないんだ

そう思った時に

アヤネ
「ねぇ、私のパートナーになって」

…俺さ

少しは変われるんじゃないかな

コイツと一緒にいると



マーシャ…

俺はお前をずっと守り続ける

だから…笑っていてくれ

…俺のために…これからも

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