SS 2

□トナカイエドと大佐ンタ〜国家トナカイ襲撃事件〜
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間もなくクリスマスの季節になろうかという寒い日の朝のことである。
東方司令部管轄内で世間を震撼させる事件が起こった。

「軍のトナカイが襲撃されただとッ!」

ここ、東方司令部で事実上トップの座に君臨する若きエリート、ロイ・マスタング大佐ンタは受話器を片手に奥歯をぎりりと噛んだ。

程無くして対策本部にて緊急会議が開かれる。
マスタング大佐ンタと腹心の部下たちを中心に、事件現場の警備に直接当たっていた軍人たちが会議室に揃った。

「報告を」

マスタング大佐ンタの副官───鷹の目の異名を持つ麗しき女性軍人が短く命じた。

「はっ!」

2名の軍人が立ち上がる。

「早朝6:25、イーストタウン運動公園の西口付近で上半身裸の軍のトナカイが倒れているのを散歩していた近所の老夫婦が発見、ただちに駐在所に通報、とのことです」

「怪しい人物の目撃者、なし。前日23:00に市中警備に当たっていた者からは特に変わった様子はなかったと報告が入っております」

「犯行手口は錬金術ではないかと思われます。頸椎、及び頭部に何らかの衝撃を受けています。しかし、銃創はありませんし、脱がされた衣服にも人為的な力が加わった跡は見られません」

副官・ホークアイ中尉は横目で上官を見る。
マスタング大佐ンタが口を開いた。

「これは国軍に対する宣戦布告と受け取る!トナカイの意識が戻り次第聴取を始めろ。犯人の顔を見ているかもしれん。東部全域に検問を行え。犯人を遠くに出すな」

「はっ!!」

それから、と大佐ンタは続ける。

「東部のサンタはトナカイを徴集し司令部に揃って出頭せよ!セントラルに…大総統府に通達を!」

かくして、イースト管轄のサンタとトナカイがマスタング大佐ンタの元に一同を介することになった。
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