再録

□くるりくるくる
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※リボーン十年後設定


 くるりくるくる。
 見事な螺旋を渦巻くそれを引っ張ってみたくて、今まで頑張ってきた。





「うわ、がっかりだよ。ホントに時間って残酷だよね」


 この数年で綱吉のあどけなさは消え、代わりにボスとしての品格を身に付けた。


 ……様に見せかけ、ただ単に猫を被るのが上手くなっただけだと一部の守護者達は言う。



 綱吉は執務室に他に人目がない事を幸いと盛大にため息をついた。

「何だ? いきなり……」

 切れ長の瞳をした全体的に黒ずくめの印象の男がこちらに視線を寄越す。


 劇的な変化というならこの男の方がそうだと言えるだろう。
 すらりとした体躯に鋭い眼差し、赤ん坊時の片鱗さえ見られない、世界最強のヒットマン、リボーンだ。

 もっともこちらは変わったというより元の姿に戻ったと言った方が正しい。


「ホントに本っっ当に残念だよ。オレの青春を返せ、バカヤローって感じだよ」


 綱吉はリボーンの視線を軽く受け流し、ぶつくさと文句を言いながら、手元も見ずに次々と右手で書類にサインをしていく。

 綱吉の視線は一ヶ所に固定されたまま、左手はグイグイと何かを引っ張る様な仕草
をしている。


 リボーンは綱吉のその動作に不吉な物を覚えたが気付かない振りをして綱吉に話し掛けた。


「……書類、読まなくて良いのか?」

「良いんじゃない? 獄寺くんがザッと目を通してくれてたし、不備が見つかったら難癖付けて骸に処理させれば良いだけだし」

 綱吉の言い分にリボーンはかなり引きつりながら言葉を返す。
 涙を堪え無言で書類の手直しをさせられる哀れな霧の守護者の姿が目に浮かぶようだ。

「すげぇお役所仕事だな、ツナ。まったくどうしてこんな奴に育っちまったんだ?」

「あはは、マフィアなのにお役所仕事って笑えない冗談だね。……ついでにオレがこんな性格になったのはお前の教育の賜物だと思うけど、リボーン?」

 違う、絶対に違うとリボーンは現在では完全に立場の逆転してしまった教え子に心の中で抗議する。

 そんな家庭教師の思いを知ってか知らずか、綱吉は賞賛に値する程、完璧な笑みでリボーンに笑いかける。


「ね、リボーン。オレの願いを叶えてくれない?」

 可愛らしく首を傾げる綱吉にリボーンは純真無垢だった昔の綱吉の姿を重ね、不覚にも内容も聞かず二つ返事でOKしてしまった。

「おぉ、良いぞ」




 直後、リボーンは迂闊な自分を殴り倒したくなるのだが……。









「そ? ありがと。じゃあ、そのモミアゲ引っこ抜かせて」

 ホントは赤ん坊の時のくるくるモミアゲが理想だったけどと、にこやかに微笑む綱吉にリボーンは怒声を解き放つ。



「出来るか〜っっっっ!!!」


 今まさに世界最高峰の二人のバトルを告げる、試合開始のゴングはなったばかり。


 この結末を知る者は今はまだいない。







2009.11.29


拍手お礼文として昨日UPしましたが私情により拍手お礼文より撤去しました。

その際、加筆修正しました。

日付間違えてたし……


恥ずかしい。


ギャグ抜きシリアスを目指して頑張りました(当社比)


苑央
 

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