再録

□最強にして最凶の
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「ツナヨシ! ツナヨシ!!」

 暖かな午後の昼下がり、自分の名前を囀ずりながら飛んできた黄色い生き物を破顔一笑、出迎えた。

「いらっしゃい、ヒバード」

 最凶の不良にして、並盛の風紀委員長であるあの人の周囲を飛び回るこの鳥をそう名付けたのは確かハルだったか……

 ぼんやりとそんな事を考えながら鳥を撫でていると、手の上から小さな声が挙がった。

「ツナヨシ! ゴハン! ゴハン!!」

「あっ、とゴメン。クッキーで良いかな? 確か京子ちゃんに貰ったのが……」

「クッキー!! クッキー!!!」

 パタパタと小さな翼を羽ばたかせ喜びの意を表している小鳥に一部始終を見ていた友人の一人が悪態をつく。

「このバカ鳥!! 十代目に手ずから餌貰いやがって、生意気なんだよ!!!」

 そう言いながらもペットボトルの蓋にミネラルウォーターを入れてやる辺り、情が移っているらしい友人に綱吉は苦笑した。

「っとに、自分で餌くらい捜せよな」

「ウルサイ、ダマレ!!! ダケン!!!」

「なっ!?」

「ダケン、キライ! カミコロス!!」

 小さな嘴から発せられた言葉に目を剥いた。

「このアホ鳥っっ!!!!!」

「ち
ょっと獄寺くん落ち着いてっっ!! ヒバードは雲雀さんの口癖覚えちゃって口走っただけだからっっ!!!!!」

 小鳥が覚えてしまう程、某風紀委員長がそう口にしていたであろう事はそっと胸に伏せておく事にした。

「じゃあ、ヒバード。ツナの事はスキかキライか?」

 横から暢気な口調で訊いたのは綱吉のもう一人の友人。

「山本、何言って……」

「ツナヨシ、ヤサシイ! スキ!! ダイスキ!!!」

「ツナ、モテモテなのな〜」

 動物にモテモテでも……、と思わないでもなかったが、好意を持たれてるという事はやはり嬉しい。
 だから素直に礼を言った。

「はは、ありがと。オレもヒバード大好きだよ」

「ツナヨシ、ヒバード、ダイスキ! リョウオモイ!!」

「……ホントにどこでそんな言葉覚えてくるんだ?」

 あの風紀委員長が言うとは考えられない。
 いや、考えたくない。

 好きだからこそ雲雀の傍にいるのだろうとはわかっていたが、ふと思い付いたので綱吉も尋ねた。

「雲雀さんの事は好き?」

「ヒバリ、スキ! アタマ、フワフワ!! マワリ、シズカ!!! ネヤスイ!!!!」

「ウルサイ、ソウショクドウブツ、カミコロス!
!」

「は?」

 思わず我が耳を疑った。


 雲雀の頭(髪)は柔らかく、わざわざ騒がしくして危険人物に咬み殺されに来るバカはいないから静かで寝床としては最適だ。
 だから雲雀は好きだ。


 訳すとこういう事だろうか?


「えっと、ヒバード?」

「オナカイッパイ! カエッテモイイ?」

 綱吉達がぐるぐると考え込んでいた間に食べ終わっていたらしく、問いかけを無視する形で尋ねてきた。
 可愛らしく首を傾げても、一度蒔かれた疑惑の種はそう簡単に取り除かれる事はない。


 パタパタと軽い羽音を残し、飛び立って行った鳥を見送りながら、その場に居合わせた一同は思った。




 まぎれもなく並盛最強にして最凶はあの鳥だ。




 

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