夢物語
□動き出す物語
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♪〜〜♪〜♪♪〜〜〜♪ー…………
ここはうた音国を統べる国王の城の最上階
『……物語が動き出す。』
そう小さなそれでも凛とした声で呟き、
そこに居るのは
無表情なのに
哀しみで瞳をいっぱいにした
神の奇跡
と、この国で唄われる
美人と言うに相応しい
中性顔の少女であった。
やがてその人は
肺をこの国の空気で満たすかのように息を吸うと
大きな溜め息を吐き出し
傍らのウィッグを被り
何やら複雑な呪文を唱え
『また帰って来るからー…………』
とだけ言い残し
誰にも告げず
誰にも見届けられる事なく
人の視界から
城から
国から
世界から
この次元から
消えた
.