Symphonia

□第7話 水の封印
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 パルマコスタを出て旅を続ける未来達。
 しかし彼女らには、まだやるべき事があった。

 ハコネシア峠にある再生の書を見せてもらう為に、一行は近くの救いの小屋に向かう。
 そこに祀られているスピリチュア像が、再生の書を持つコットン老人は欲しいというのだ。

 信仰の象徴を持っていく事は、些か躊躇われたがこれも世界再生の為。
 小屋に常駐している祭司長と祭祀にこの事を話すと、予想通り眉をひそめた。


「導師スピリチュア像が欲しい……と仰るのですね?」
「不躾なのはわかってる。でも世界再生の為なんだよ」
「かなり強引な気もするけどね……」


 頼み込むロイドに、祭祀も困ったように顔をしかめる。


「お願いします、祭司長」


 とどめにコレットが頭を下げた所で、ようやく祭司長が首を縦に振った。


「神子様の仰せなら、何を迷う事がありましょう。すぐにでもスピリチュア像をお持ち下さい」


 祭司長はスピリチュア像を取りに行くように祭祀に言うが、当の祭祀は顔を青くさせて突然頭を下げた。


「も、申し訳ございません! この導師スピリチュア像は、私が用意した偽物でございます」
「……はい?」


 何を言ってるんだこの人は。
 未来達の頭に浮かんだのは、まさにそんな言葉だった。

 祭祀の弁解を聞いてみると、一昨年の旅業の時に像を持ち出し、ソダ間欠泉にうっかり落としてしまったのだという。
 何で旅業に持っていったんだと問えば、盗難の恐れを考慮して持ち出す慣習だったらしい。


「何でそんな所に持ってくんだよ、もー……」
「面目ございません。初めて見る間欠泉に酷く感動いたしまして……」


 申し訳なさそうに項垂れる祭祀の、像を落とした理由が何だかかわいく思えた未来だった。
 困った祭祀はイセリアに住むドワーフにそっくりの偽物を作ってもらったという。
 そのドワーフとは、どうやらロイドの養父のダイクさんらしい。


「……親父。どんな仕事してるんだよ」


 呆れたように呟くロイドに、何も言わない未来だった。
 場の空気を変えるように、クラトスがすこし語気を強めて問う。


「さて、どうする? 偽物であの老人の目をごまかせるか?」
「うーん、難しいですね。あの手の人間は目が肥えてるから」
「よくできていると言っても所詮フェイクだし、ダイヤは屑物ですものね」


 未来とリフィルが渋い顔で言うと、一気に空気が重くなる。
 そんな中、コレットが小首を傾げた。


「あの……本物を拾ってきたらどうかな?」
「……ソ、ソダ島まで行くの? それに岩場は間欠泉を超えた先にあるんでしょう?」


 何故か慌てるリフィルに疑問を抱きつつ、未来は少し考える素振りを見せた。


「……間欠泉の周期は、どれくらいですか?」
「確か、かなり早いと聞くが……」
「……スピード勝負だな」


 ポツリと呟く未来。
 首を傾げるロイド達に未来は自分の考えを話す事に。


「短時間なら、氷の魔術で間欠泉を止められると思うんです。その間に像を取りに行けば……」
「それならボクにも手伝えるよ!」


 ジーニアスも快く同意し、作戦が決まる。


「ドワーフの誓い、第1番。平和な世界が生まれるように皆で努力しよう、だ」


 かくしてスピリチュア像を獲得する為に、一行はソダ島に向かう事になった。





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