短編

□林檎のような君を
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じめじめとした天気だった。
そーいやー天気予報で雨が降るかもって言ってたっけ。
まぁいいや。雨降ったら名前の傘借りればいいし。
つか、泊まればいっか。
ポケットから名前のアパートの鍵を出した。



「よぉ」

「あ、阿部!早かったね」

「大分片付いてんじゃん。てか、荷物多すぎじゃね?」

「女の子は荷物が多いの!」



俺は名前の手伝いに来たが
あまりの荷物の多さにびっくりした。



「お前さ、いるもんだけにしろよ」

「わかってるよ」

「これで全部か?」

「ううん。まだあるよ。」

「はぁ。俺ん家が狭くなるじゃん」

「家が完成するまでの我慢よ」



ほら手伝ってと何やら収納ボックスを渡された。
中には名前の小中高の卒アルや写真が入っていた。



「ちょ、何見てんのさ!」

「んー?名前の卒アル」

「高校ならいいけど、それ以外は見ないでよ!」

「別にいーじゃねぇか」

「恥ずかしいんだって!」

「お前、あんま変わってないな」

「人の話聞いて…」



あんまからかってっと拗ねるから卒アルを閉じた。
卒アルの横にあった小さなアルバムを開いた。



「あ、それ野球部の写真だよ」

「そーいや、名前いつもカメラ持ってたもんな」

「懐かしいね。もう5年も前だよ」

「こん時は名前と結婚するなんて思ってなかったな」

「あたしも!阿部と結婚するなんて思わなかった。みんなもそう思ってんじゃない?」

「………」

「…なに」

「前から言おうと思ってたけど」

「う、ん」

「いつまで俺のこと名字で呼ぶわけ?」

「え?」

「もうすぐお前も阿部になんのにおかしいだろ」



つか、もう7、8年一緒にいるのに
そう言うと名前は顔を真っ赤にさせた。



「…た、かや」

「聞こえねー」

「う〜、…隆也!」

「お!なんか新鮮」



恥ずかしいとまた顔を真っ赤にさせた。
そんな名前が可愛くてギュッと抱きしめた。



「ちゃんと幸せにしてやっから」

「うん。楽しみにしてる」







林檎のような君を








( 何で今まで名前で呼ばなかったわけ? )
( タイミングがわかんなかった )







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