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□志、青き春のために! 1
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ここは強い者だけが入学することを許された、私立無双学園。
入学資格はただひとつ、"強い"ということ。
入学試験も、学園長を始めとした教員と闘って勝てば合格。
また、頭脳面での強さをもって入学した者もいる。

しかしそれ故か生徒も教師も、紛う事無く曲者揃いであった。






志、青き春のために!






「この間の小テストの返却をするから、名前を呼ばれた者から取りに来なさい。まずは甘寧」

一年呉組の活気づいた教室の中、数学教師の声が響く。

「んだよ、俺からかよっ」

「仕方ないですよ、出席番号順なんですから」

悪態をつく学友に、陸遜は軽く笑った。

「俺もこないだのはちょっとヤバいんすよねぇ…陸遜さんはそんなことないんでしょうけど」

通路を挟んで隣の席の凌統が机に突っ伏しながらも自分が呼ばれるのを待っている。

「凌統、俺より点数低かったら昼飯奢りな!」

そう言って帰ってきた甘寧の手の中の回答用紙には75という数字。

「ったく、なんだよそれ。俺にメリットないっつの」

「陸遜!」

「あ、はい」

名前を呼ばれて教壇の前まで行くと、思った通りの点数が書かれた紙が手渡される。

「陸遜、君ならもうちょっと頑張れるんじゃないか?他の教科はクラスで一番じゃないか。」

手渡された紙には25という赤い文字。

「私、数学苦手で…」

そう言いながらも、顔は綻んでいる。勿論その表情は目の前にいる教師にしか見えない。

「今日の放課後残れるか?君が良ければ補講をするが…」

そういった教師の顔も決して厳しくはなく、むしろどちらかといえば穏やかだ。

「はい、大丈夫です」

「じゃあ放課後、職員室に来なさい。どこか空いてる会議室ででもやろう」

「はい、ありがとうございます趙雲先生」

くるりと向きを変えた陸遜の顔は数学教師に向けていた顔とは違い、暗く悲しそうな表情。
陸遜は強くもあるが、決して頭脳面で弱いわけではない。むしろ戦うことよりも頭を使うことのほうが得意といえる。

「おい陸遜、どうだったーって、俺より低いのかよ!?」

前の席に座った甘寧が答案を取り上げる。
隣の席の小喬、陸遜の次に呼ばれ帰ってきた凌統もその答案を見て愕然とする。
夏休み前の学科試験では、クラス一位だけでなく全体順位まで一位を取った秀才のその点数が信じられないのだ。

「今日し…趙雲先生が補講をしてくださるそうです」

そっと答案を取り返し、どこか嬉しそうな表情で話す陸遜。

「なんだよ、せっかく帰り一緒にナンパでもしに行こうと思ってたのによっ」

「お前と違って暇じゃないんだよバ甘寧」

陸遜が何か言い返す前に凌統が返答する。

「馬鹿っていう奴が馬鹿なんだよ!そういや何点だったんだ?凌統」

凌統の手の中の答案を取り上げれば

「お前が昼飯奢りな、あと陸遜さんのも」

「あっずるーい、アタシもーっ」

赤い字で100と書いてあったのだった。



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