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□Lu-Xun in WonderLand
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■white rabbit?


陸遜は芙蓉の咲く庭の四阿で、師の周瑜の話に耳を傾けていました。
尊敬する周瑜の声は低く心地好く、暖かい午後の陽射も手伝って陸遜を眠りに誘っています。
澱みなく、さらさらと流れる声が不意に途切れてしまいました。不思議に思うと、書簡をひとつ置いてきてしまったというのです。
自室まで取りに戻ると言って席を外した師の背中を眺め、青い空を映した美しい池に目を移します。

池に点々と浮かぶ飛石。すると、目の端に跳ねる何かの影が写りました。

「なんだろう?」

立ち上がって首を廻らすと、なんと飛石の上を一昔前のヤンキーの様な格好をして、白く長いウサギの耳が付いた青年がしきりに時計を気にしながら器用に跳ねて行くではありませんか。

「なんでリーゼント!?凄く気になります…」

気になったが最後、陸遜は持ち前の足の速さでヤンキーウサギを追いかけました。

「ああもう遅れちまう!頭でっかちがうるせーんだよなぁ!!」

まだそれほど近くはないのに、ウサギの声はよく聞こえます。
それもそのはず、ウサギの声はとても大きかったのです。

「あのっ、すみません!」

ある程度近付いた頃、陸遜はウサギに声を掛けました。
声に振り向いたウサギの人相の悪いことったら。

「あー、ごめんなお嬢さん。俺ちょっと急いでんだ!またな!」

しかしいざ話してみれば人懐っこそうな笑顔をして、池の脇の茂みの中へ跳んでそれきり消えてしまいました。
陸遜はウサギの消えた辺りの茂みを見つめましたが、かさりともいいません。

「ていうか私、お嬢さんではないんですけど」

ウサギが間違えるのも仕方ありません。
陸遜は沢山のパニエとドロワーズでふんわりふくらんだパステルピンクのエプロンドレスに頭には黒いリボンのカチューシャ、ボーダーのニーソックスに光沢のある可愛らしいティパーティシューズという出で立ちなのですから。
勿論これは陸遜の趣味ではなく、師の周瑜の趣味なのですが。

「誤解を解くためにも追いかけないと!」

陸遜の思考に"諦める"という選択肢はありませんでした。

「諦めたらそこで試合終了ですしね!」

スカートの裾が引っ掛からないようにたくしあげ、狭い飛石の上で少し助走を付けると勢い良くウサギの消えた茂みへ跳びました。
その高さは先程のウサギよりもずっと高かったことは誰も知りません。

背の低い木を跳び越し、足に当たるだろう地面はありませんでした。

「えっ?うわぁぁぁっ─────…」

そこにはぽっかりと、大きな縦穴が空いていたのです。
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