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□いつかの日まで
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腕の中の躯が、どんどん冷たくなっていくのを陸遜は感じた。


愛しい人の命が、もう直ぐ消えてしまう。


もうどうする事も出来ないと分かっているのに、己の体温が少しでも移るようにと陸遜は腕の中の趙雲を抱き締めた。

「怖い、な」

ぽつりと趙雲が呟く。その瞳に、もう光は殆どない。

「死ぬ、のは怖い…」

三国一の英雄の唇から漏れる負の、本音。

「ずっと傍にいて…君の笑顔を見ていたいのに…

もう抱き締めることも、口付けることも叶わない…」

そしてあの槍で君を守る事も。と血の流れる唇で薄く笑んだ。

切り落とされた右腕。誰かも分からない剣に貫かれた左手。
少し離れた場所には、趙雲が数多の戦を共にしてきた槍が、彼の右腕と一緒に転がる。

「子龍殿…」

戦でパサついた彼の長い髪を指に絡めて、血の香の漂う前髪に口付けた。頬に生暖かい雫が伝う。

「いつか戦のない、平和な時代が来たら、私を迎えに来てくださいね」

語りかけた趙雲の鼓動は、既に止まっていた。
愛しい人の抜け殻。
最後の言葉は届いたのだろうかと、優しい笑みで眠る趙雲の冷たい頬に口付けをして、陸遜は立ち上がる。


END
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