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□キミのヒカリ
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この、生温い水に浸かっているような関係を叩き壊すのは簡単なことだった。


―コイツを自分のものにしたかった。自分だけに笑いかけて欲しかった。


そして、その願いは晴れて叶えられた筈だった。
それなのに……





「晋助!お前は朝からホントに可愛いな!」

「あ?ありがとよ?」

「しーんー!!好きじゃぁぁぁ!!」

「おう、良かったな」

上から順に、桂、高杉、坂本、高杉。

まだ働きたくないとごねる頭に嫌でも入ってくる情報。
足音と騒がしい声は次第にこの部屋に向ってくる。

(晋ちゃんが起こしに来てくれるのは嬉しいんだけどねー…)

すぱぁん!と異常な勢いで障子の戸が開き、日光が銀時の目を刺す。

「銀時ーテメェ起きてんだろ?早く来ねぇと朝から襲うぞ」

「えぇのー金時ぃぃ…儂も襲われたいぜよー」

「朝から何を言ってるんだ晋助!」

(あーあ…こいつらさえいなかったら晋ちゃんに襲ってもらうのになぁ)

小さく溜め息をついてからゆっくり上体を起こす。
自分のものにしたという気持ちも雰囲気もまるでなくて。
既に二人には恋仲になったと告げたはずなのに、だ。

「オハヨ、銀時」

布団まで寄って来た高杉をちょっと見上げて微笑むと、頬に柔らかい感触。
未だ働く意思を見せない脳は、その柔らかさの正体を知るのに数秒を要した。

「…しん、ちゃん?」

「おはようのチュウは恋人の特権だろ?」

ニッ、と普段あまり笑わないくせにこんな時だけ可愛く笑って、くるりと踵を返して去っていった恋人。

既に廊下のお邪魔虫共は姿を消していて。

「…っ!!」

普段あまり笑わない、とすればあれは自分だけが見ることを許された笑顔。
そして恋人の特権。


「やっべ、勃った。」

END
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