リーマン趙雲×ウサギ人間陸遜

けもみみ陸遜注意!






カーテンの隙間から差し込む陽に、ズキズキ痛む頭。
上司に煽られ飲み過ぎたな、と思い薄く開いた男の目に飛び込んだその物体。
興味深そうにこちらを向いて大きく開いたそれとふたつの瞳。
そして朧気ながらも確かにあるその記憶。

「嘘…だろ…」




Bitter sweet rabbit!
└act.1




痛む頭を押さえて身を起こすと、酔った勢いで買ってしまったその生き物は恐ろしい速さで部屋の隅に逃げた。
びくびくしながらこちらを伺う"それ"は、ここのところ流行っている"ペット"と呼ばれる生き物。
人の身体の作りと他の動物を合わせた人口生命体。しかし殆ど人間と言っても差し支えないかもしれない。
違うのは動物の耳や尻尾が付いているということと、各々の動物の習性を少なからず持っているということくらいだろうか。

男、趙雲はそんなもの自然の摂理に反するだろうと手を出す事はしないと決めていた。が、実際己の部屋に居るのは白い和毛に血の色が透けた愛らしいピンクの長い耳にグレー…というより青に近い瞳のウサギ人間。
髪は焦げ茶で短く、己が着せたのか身体に合わない大きなシャツを纏っていた。

「あー…ええと…どうするかな…」

大体ウサギが雄か雌かも分からない。
とりあえず手招きしてはみたものの、隅から動く様子はない。
暫くウサギから目を離して(というか頭が痛い)考えていると、足元にウサギがやってきていた。
そっと手を伸ばしてみると、怯えは見せるものの逃げようとはしなかった。
危害を与える存在ではないかも、とは思ってもらえたらしい。

「君…名前は?」

「なま、え?」

青い瞳が驚いたように瞬く。
ペットショップ(いや露天商だったか、)で買ったのだから当然名前など付いてないと気付くのにさほど時間は掛からなかった。

「名前付けてやらないとなぁ…それより雄なのか雌なのか…」

「!!!!!?」

足元に座るウサギを抱き上げてみる。
ばたばたと足を動かして逃げようとしているが、逃がすわけにもいかない。
脇下に腕を入れ膝の後ろを両足抱えて抱く、所謂お姫様抱っこをして膝の上に乗せる。

おとなしくなったウサギのシャツの釦をふたつほど外せば真っ平な胸が覗いた。
そこまで幼くはない容姿であるからして、雄のウサギのようだ。
「雄か…可愛い顔してるから雌かと思ったんだが」

呟きに下からムッとした視線がくるが気にしない。
手をシャツの裾から忍ばせると、楕円型に反り返るフワフワした尻尾にあたる。

「ひっ……やっ!」

「名前…どうしような…」

フワフワを指で遊びながら名前を考える。
耳がぷるぷる震えていやがっているのか恥ずかしがっているのか分からなかったが、飼い主の権限とばかりに散々いじくり倒し。

「白…はく、伯言でどうだ?」

漸く導いた名前に腕の中のウサギに問い掛ける。

「なまえ?」

「そう、よろしくな」

酔った勢いとはいえ、買ってしまったものは仕方がない。
なら可愛がってやろうと抱いた足から手を離し頭を軽く撫でた瞬間、その細い足の何処にそんな力があるのか小一時間ほど問詰めたい位の力で腕を蹴られた。
するりと腕を抜けてまた部屋の隅に逃げたウサギは嫌悪も露な目で趙雲を見ている。
ついでにダン、とひとつフローリングを踏み鳴らす音。



こうして趙雲とウサギの生活が始まった。






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