Silver soul

□−long awaited−
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誰もいない公園。
自分だけがこの小さな空間を支配していた。
それに僅かながらに満足感を覚えながらもやはり何処か寂しい気持ちもあるわけで。

何処で聞いたのかも忘れてしまった歌を口ずさみながら赤み掛かった空を見上げた。
と、ふと背後に人の気配を感じて振り返れば黒一色の彼が其処に立っていた。

「こんな時間に一人で何やってんだ。」

万事屋が心配するんじゃねぇの、そう言って自分の隣のブランコに座る彼に首を傾げた。
僅かに紫煙が此方に届き、嗚呼、彼の匂いだと変に納得してしまう。

「何しに来たアルか。」
「一人で公園のブランコに乗ってるお嬢さんに声をかけに。」
「ナンパはお断りアル。」
「ばーか、補導だ補導。」

そう言いながらも一向に何処かへ連れて行く気配のない彼に神楽は僅かながらに嬉しさを感じた。

「静か、だな。」
「こういう時間が一番幸せだって、銀ちゃん言ってたネ。」
「…そうかもな。」

何もないあの頃が一番幸せだった。
唯ぼうっとしているだけの時間が何より平和だった。

「多串… 」
「土方だって言ってんだろ。」
「トシちゃん… 」

反論はなかった。
彼は小さく返事を返して神楽の言葉を待った。

「また、此処に来るアルか?」
「 ・・・ 」
「また、明日も此処に来るアルか?」
「…気が向いたらな。」
「きっと向くアル。」

土方は立ち上がると、神楽に手を差し伸べた。

「ほら、家まで送ってやっから。」

神楽はその手を何の躊躇もなく握り返した。



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