自作お題

□unreturned love
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unreturned love
―片思い―



ムカつく。
何もかもがムカついて仕様がない。

でも、どんなにこの気持ちに腹を立ててもアイツは何も知らずいるのがもっと腹立たしい。
ねぇ、ちょっとでいいからコッチを向いてヨ。


一際目立つ黒を見つけた。
それを視界に認めた瞬間、胸がぎゅうっと締め付けられる。
どうしようもないこの想いをどうするか、なんて自分でも分からなかった。


「多串くん、」


この言葉は案の定、彼の耳に入ることはなかった。


「多串くん、多串くん、多串くん、」


だんだんと彼の歩みが速くなる。
それに負けじと自分も歩幅を広げた。


「多串くん、多串くん、多… 土方!」


あ、やっとこっちを振り向いた。


「五月蝿ェ、見回りの邪魔だ。」
「何で無視するヨ。」
「俺の名前は土方だ!」


多串じゃねェ、と言う彼にごめんヨと大して反省もしていない返事を返した。
横に並ぶと途端に距離が縮まる。
何だかんだ言って彼は優しい。
今も自分の歩く速さに合わせてくれている。


「ねぇ、土方。」
「あ?」
「土方には好きな人いるアルか?」


いきなりな質問に土方は煙草を落とした。
あ、ポイ捨て。と暢気なことを思いながら、続く言葉を待つ。


「いきなり、何だよ。」


何でもないかのように落とした煙草を拾うも、やはり動揺は隠しきれていない。
そんな彼にまた、ちくりと胸が痛んだ。


「アタシは… 」


きっと言えば困る、なんてこと分かってる。
分かってるけどどうしようもないんだ。
溢れ出しそうで、今にも泣き出しそうで、辛いんだ。


「土方が、好きヨ。」


ぴたり、と土方が歩みを止めた。
ねぇ、今どんな顔してる?
困った顔?呆れた顔?それとも・・・

どんな顔でもいい。
だからちゃんとアタシを見て。


「神楽、」


目線が同じになる。
少し屈んで、土方はアタシの頭を撫でた。


「悪いことは言わねェ、俺はやめとけ。」


そっと手渡された四角い箱。


「お前、それ好きだったろ?」


何て酷い男…

アタシの気持ちは酢昆布一箱で収まりきれるものなんかじゃないのに。
どう足掻いたって彼はアタシを子供としか見てくれないのだろう。


「土方… 」
「送ってく。」


もう、こっちを見てはくれないの?
ねぇ、土方…


駄目なんだ。
どんなに貴方がアタシを受け入れようとしなくても、



大好きなんだ。



子供だと思ったら大間違い。

今に驚くほど綺麗になってやるヨ。


それで将来、アタシを振ったことを泣いて後悔するがいいネ。





貴方がもし、私を選ぶというのなら
私は笑顔で返しましょう




end





土方のことが好きでしょうがない神楽と、神楽を子供としか見ていない土方。
俺はやめとけ、というのは土方なりの精一杯の優しさ。

誰か←土方←神楽 な図。


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