リクエスト

□相互記念
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少しでも近付きたくて。
只の好奇心。
それに指先が触れた瞬間、ざわりと何かが身体を巡った。




*灰色、中毒*




きょろきょろと辺りを見渡してから、神楽は机の上に無造作に置かれたものに手を伸ばした。
いつも彼が吸っているそれ。
一度何がそんなに美味いのかと問うたことがあった。
しかし返ってきたのは美味い、ではなく只なければ落ち着かないのだと。
一種の安定剤だとも言った。


「…これのどこが安定剤ネ。」


肺の中を真っ黒にしてしまう只の毒。
だからあんまり彼に近付くなと銀時に注意を受けたこともあった。


「これが…毒」


箱から一本。
その行為に酷く高ぶりを覚えた。
悪戯を見つかってはいけない子供のように。
神楽は恐る恐るそれを口許に近付ける。
徐々に早くなる心拍数に気付かない振りをしながらゆっくりと。

唇に触れたそれをそろりと舐めてみる。
しかし求めていた味はしなかった。
いつも鼻腔を擽るあの苦い匂い。
それを求めてみたのに舌で感じたのはそれとはほど遠いものだった。
やはり火を付けなければ駄目なのか。

神楽は少し落胆した気持ちでそれを箱に戻そうと手を下ろした。
と、ふいに気付いたあまりにも自分に不釣合いなそれ。
彼が持つそれは違和感などまるでないというのに。
しばらくじっと見つめていると、すっと背後の襖が開いた。


「何やってんだ。」


びくりと身体が跳ねる。
悪戯が見つかった子供のように、神楽は恐る恐る彼を見上げた。


「…煙草か。」


土方はゆっくりと部屋に入ってくると、神楽の手の中のそれをそっと取り上げた。


「まだお前には早ェよ。」


そう言って神楽の頭をくしゃりとかき混ぜる。


「口寂しいんならこれでも食ってろ。」


そう言って土方のポケットから出てきたのは、神楽の大好きな酢昆布の箱。
いつもなら飛び付いて喜ぶはずなのに、神楽は只じっと黙って俯いていた。


「何だ、いらねェのか。」


土方がそう問うと違う、と首を横に振る。
土方は神楽の手に酢昆布の箱を握らせると、神楽の目の前に腰を下ろした。



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