リクエスト

□雨宿り、
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天気は生憎の雨。

そーいえばトシが今日は雨降るから傘持ってけって言ってたなー、なんて呑気なことを思いながら近藤は澱んだ空を見上げた。


「ちゃんとトシの言う事聞いとくんだったな…」


なんて今更後悔しても遅いけれど。
ますます強くなる雨に近藤は深く溜め息をついた。

と、視界の端に捕らえた人影。
もう何度も追いかけているそれを見違えるはずがなかった。


「お妙さん!!」


そう声をあげると、彼女は少し驚いた風に目を大きくして近藤を見た。


「いやぁ、奇遇ですね!」


近藤は先程の憂鬱な気分など吹き飛ばし、いつもの眩しいくらいの笑みを浮かべる。
そんな近藤に妙は僅かに眉を寄せ、首を傾げて問うた。


「何をなさってるの。」
「あ…、ちょっと雨宿りを。」
「傘は?」
「生憎持ってなくて、」
「今日は朝から雨が降るとテレビで言ってたわ。」
「あー、トシもそう言ってたんですけどね、」


ついうっかり、そう言う近藤に妙はいよいよ眉を潜めた。

「何時からそこに。」
「一時間、ほどですかね。」


よく見ると、黒い隊服で分かり難いものの多量に水分を含んでいるようだった。


「帰る機会を逃してしまって、」


そう言って、笑いながら髪をかき上げる間もぽたぽたと滴が垂れる。


「お妙さんは買い物ですか?早く帰らないと風邪引きま……」


ふいに傾けられたそれに近藤は首を傾げた。
しかし、そんな彼に焦れたのか、妙は少し急かしたように言う。


「早く入って下さいな。このままじゃ私まで濡れてしまうわ。」


そう言って不服そうに眉を潜める妙に、近藤は慌ててその中へと身体を滑り込ませる。


「え…、と」
「狭いのは我慢して下さいね。元々一人用ですから。」
「あの、はい。それは構わないんですが、」


しどろもどろの近藤に、何か問題でもあるのかと妙は首を傾げた。




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