リクエスト
□制御不能
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我慢の限界なんていつ訪れるか分からない。
もしもその時が訪れてしまったら、俺はきっと声を大にして言える。
自分を制御なんて出来やしない。
する気だってない。
制御不能
「銀さん、そんな所で寝てたら風邪引きますよ。」
夏も終わりにさしかかり、この庭では一足早い秋の風が吹いていた。
そんな気持ちのいい風に乗せて、一番落ち着く声が耳に届くもんだから此処からそう簡単に動けないことだって分かってほしい。
「お妙が膝枕でもしてくれるってんなら起きる。」
「馬鹿なこと言ってないで。第一それじゃあ矛盾してるじゃないですか。」
小さな子供をあやすような、もっと言えば店に来る連中をあしらう様な。
そんな言い方に聞こえて、胸の奥がむかむかした。
そんな奴らと同じラインなんかに乗せてほしくはない。
「此処は落ち着くんだよ、」
「本当に、人の許可なく勝手に上がり込んでるんだから呆れますよ。」
口ではそう言っているものの、その声色は極めて優しい。
それだけで普通の人間とは違う扱いを受けている気がして僅かに優越感を覚えた。
「…ほら、ずっと此処で寝てたから、銀さん、葉っぱまみれですよ?」
くすくすと甘い笑い声が聞こえて、目を瞑っていても分かる。
あの細く白い手が、俺の頭を、頬を、肩を撫でる。
本人は無意識のその行動も、俺の何かを高ぶらせるには十分すぎるほどだ。
「…はい、これで全部取れましたよ。」
うっすらと目を開けると、にっこりと笑って落ち葉を手にする彼女の姿。
「綺麗だな…、」
ぽつり、とそう零した声は、無意識というにはあまりにも確信めいていた。
「えぇ、紅葉の葉って綺麗ですよね。」
そう言って、手の中の赤く色付いた葉を眺める彼女にもう一言。
「いや、それじゃなくてお前が。」
その瞬間、これ以上にないくらいその瞳を大きくするもんだから、思わず笑みが零れてしまった。
その、年相応になる瞬間が、好きだ。
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