リクエスト

□青い春
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苛々苛々…


放課後、誰もいない教室。

綺麗な夕焼け色に染まった小さな空間。

時折窓の隙間から流れる柔らかな風。

影、二つ。


苛々苛々…


「で、ここ…で公式使ってさ、」
「あ、そっか…、」

既に無人と化した教室では、鉛筆の音と二つの声が良く響く。

「最後にこれを、代入、して…」
「……で、きたアル!」

その二つの影は先程から驚くほど不自然に複雑な動きを見せていた。
この教室、3Zの生徒。
土方と神楽は只今青春真っ盛り中である。

「あーあー、」
「神楽ちゃん、可愛いわ。」
「…もどかしくて苛々するんですけど…」

そして教室の扉からこっそりとその様子を眺めている彼らもまたここの生徒、そして教師であり、二人の挙動不審な行動の理由を知る者たちであった。

「次は?」
「英語…、明日当たるアル。」
「分かった。」

新たな教科を取り出した神楽に、嫌な顔一つせず土方はカチカチとシャーペンを握る。
土方が神楽に勉強を教えるのはもはや日常茶飯時であり、この光景はごく当たり前のことであった。

「ごめん、ね、土方…」
「あ?いや、気にすんな…」

なら何故こんなにもお互いを意識しあっているのかと言えば、答えは簡単である。

「ねぇ、土か………じゃなかった、と、とー…っ」
「呼びにくいんならいいぞ…」
「…とーし、ろー」
「…………おう、」

彼らは今日、お付き合いを始めたばかりなのである。

「ぐっあーーっ!痒いっ、痒い!!」
「あら、可愛いじゃないですか。土方さんも照れちゃって、すっかり神楽ちゃんにメロメロですね。」
「今時メロメロはあんまり言いません、姉上…」

そして、二人が付き合うことになったきっかけを作ったのは、今此処にいる三人、銀八、妙、新八を含め3Zの生徒全員であった。
あまりにもどかしい二人に焦れた3Zのメンバーが、半ば暴露に近い形で二人の互いの気持ちを白状させ、見事今に至るのである。

お付き合い初日の二人はあまりに初々しく、銀八の手伝いをさせられていた志村姉弟含め、銀八自身もすっかり教室に入る機会を逃してしまっていた。




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