Silver soul

□気が付けば君を探してる
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つい探してしまう色がある。
傘が邪魔で視界が狭いけど、そんなこと関係ない。
これは自信。絶対に見つけられるの。

普段は見えない青い空。
思い切り見上げてみたいけどそれはもう少しの我慢。
ねぇ、貴方の足音一つ聞き分けられるの。

ほら、一歩。
また一歩。


あと少し。


「何やってんだ。」
「散歩。」


ほらね。


「太陽にやられて倒れても知らねーぞ。」
「その時はトシちゃん看病よろしく。」
「バカ言え。」


僅かに傾けた傘をまた元に戻された。


「空が、見たいアル。」
「今日は日差しが強いぞ。」
「どうしても。」


そう言えば彼は私の手をぐい、と引っ張り何も言わず歩きだした。
向かった先は小さな公園。


「ほら、こいよ。」


パサ、と傘が地面に落ちて思いきり彼に飛び付いた。


「満足か、お譲さん。」
「やっぱり空は綺麗アル。」


視界に広がる青、青、青。
そして大好きな黒色。


「空が見たい度に日除けにされちゃたまんねーな。」
「トシちゃん、お日様の匂いがするネ。」
「そりゃずっと外で見廻りしてたからな。」


ぎゅう、と抱き付いて心地良い香りに頬を緩めた。
唯一私が空を見上げれるこの場所は、何より特別。


「また、空が見たくなったら探してもいい?」
「お好きなように。」


つい探してしまう色がある。
青、青、青。

そして身体が蕩けそうなほど深い黒。
この色がなきゃ、私の世界は回らないんだ。


「お前が俺を探さなくても、俺がお前を見つけてやるよ。」



それは自信。



  end


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