bleach

□改めまして
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先生に名前を呼ばれて、ちょっとぶっきらぼうに返事をする貴方が何だかおかしくて、そしてほんのちょっぴり涙が出た。



― 改めまして ―




ざわつく校庭。
そこに集まっている生徒は同じ筒を手に、涙を流したり写真を撮ったり騒いだりと大忙しだ。
友達は目当ての先輩の所へ行ってしまったし、他の友達も部活の集まりなどで当人たちよりも騒がしく3年生の教室へ行ってしまった。

そう、今日は卒業式。

約400人近い生徒がこの学校からいなくなるのだ。
春になればまた新しい生徒が約400人ほど入ってきて、この学校は何もなかったかのようにまた時を刻む。
そうやって何年も何年も、私が生まれる遥か前から行われてきたこの行事。
でも、今回だけは、少なくとも私にとっては、

「あーあ。卒業式なんてなくなっちゃえばいいのに。」

つん、と目の奥が痛くなったのはきっと気のせいだ。

誰かが言ってた。
卒業式の日に告白なんてまるで少女マンガだ、と。
あまりに在り来たり過ぎなシチュエーションに私も心のどこかで、所詮は漫画の世界だし…と思っていたのかもしれない。
けど、今日。
私は自ら進んで、その在り来たりなシチュエーションを実行してみようと思うのです。

「あ……、」

遠くからでも分かる。
独特のあの色。

何度も先生に怒られていたのを私は知ってる。
何度も何度も喧嘩して、誰よりも強くて。
時には他の学校の人たちが彼に仕返しに乗り込んできたっけ。
それを彼は意とも簡単に追い返してしまい、ある意味での秘かな英雄となったのを彼は知っているだろうか。

乱暴な言葉を吐いても、必ず最後は助けてくれたよね。
きっと、甘えていたのかもしれない。
貴方の、その優しさに。

「グリムジョー、先輩」

きっとクラスメートの人たちは、まだ教室で騒いでいる途中なんだろう。
けど彼は、そんなことはお構いなしに、早々と帰路につこうとしていた。
危ない、危ない。
面倒臭そうにこっちを振り向き、あからさまに溜め息をつく。

「溜め息なんて失敬ですぞ。」
「うるせェ、用があんならさっさと言え。」

相変わらず目付きの悪い。
けど、本当に面倒臭かったら、本当に鬱陶しいと思っていたなら、彼は決して振り向かない。
それでも私の声に立ち止まってくれたのが嬉しい、なんて不謹慎なんだろうか。

「卒業、おめでとうございます。」
「あ?めでたくもねーよ、」
「卒業、しちゃうんですね。」
「何だよ、お前は。本当に用がねーなら俺は行くぞ。」

私の意味のない言葉かけにうんざりしたのか、彼はくるり、と踵を返して門を出ようとした。
そこを越えればもう二度と、彼は戻ってくることはないだろう。
明日からは彼のいないこの学校で日々を過ごすのだ。
そう思ったら。

「用ならありますよ。」
「…お前な、いい加減にしねーと俺もキレ……」

「大好きです 」

彼は少しは驚いてくれただろうか。
一世一代の大告白。
卒業式。校庭。周りには他の生徒がたくさん。

普段なら考えられないようなシチュエーションに、だって今日は特別だから、と言い訳してみた。
大好きです。
ずっとずっと言いたかった。
今にも溢れだしそうなその気持ちを、よくここまで我慢できたと我ながら感心する。

「グリムジョー先輩、大好き。ずっとずっと好きでした。入学した時からずっと…」







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