bleach

□Dear my...
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運命って信じる?
いつだったか誰かにそう問うと、可笑しそうに目を細めて頭を撫でられた。

「運命なんて誰もが感じるものじゃない。」

限られた。
少数の人間だけが得るものなのだと、確かにその人は私にそう言った。
けど、今。私は確かに。

「これは運命なんだって。そう思うよ。」






    Dear my...






誰かを思うと胸が苦しくなるだとか。
その人が笑うと自分も嬉しくなるだとか。
そんな些細な経験は既に嫌というほど知っていた。
それが、誰かを好きになるっていう事。

「でもね、違うの。」

運命ってね、そんな生易しいもんなんかじゃない。
そう言ってごろりと寝返りをうてば、落ちかけた毛布を肩まで引き上げてくれた。
そして私は、私の肩に置かれたその手をそっと握る。

「苦しいんだよ、すごく。」

駄目だって分かってても、絶対に良くないことだって分かってても。
身体の奥底で、私自身が、本当の私が。
逃げちゃ駄目だって。絶対にこの手を離しちゃ駄目だって。
全力でそう訴えてくるの。

「迷う暇なんてない。私にはこの選択肢しかないの。これしか選択しちゃいけないの。」

そしてそれを私が何より一番望んでる。
時折髪を梳くやわらかな感触がして、うとと目を細めた。
彼の膝を枕にして、ぽつりぽつりと音を漏らす。

「ウルキオラさんは、私と出会ったこと。運命だって思いますか?」

そう問えば、瞳が一瞬揺れた気がした。
きっと、“運命”の意味を理解出来ずに困惑しているのだろう。

「なら、」

だったらもっと分かりやすい方法で。
私は握っていた彼の手をするりと離し、ぱたとそのまま重力に従って腕を下ろした。

「こうやって、私の手が離れると、どう、感じますか?」

どう、思いますか?

それは彼のココロ探しにも類似していた。
産まれたばかりの子どもが、必死にあてはまるピースを探しているようにも感じられる。

「私が離れても、平気、ですか?」

子どものように必死だったのは、もしかしたら私の方だったのかもしれない。

「それは困る、な」

そう言って重力に従って垂れ下がる私の手を掬い取り、そしてそのままそっと口付けた。
それが何かの儀式のようで、私はまた運命だと小さく呟く。

「私はこの手を離したくはないし、離してほしくもない。」
「そうだな」
「ウルキオラさんも、同じ、気持ち?」
「そう、だな」

ゆっくりと瞳を閉じた彼の頬をさらりと撫でる。
そして吸い寄せられるかのようにその顔に唇を寄せれば、より強い力で引き寄せられた。
重なる唇が互いの熱の違いを伝えてくる。

「今日は、一緒に寝てくれますか?」
「今日も、だろう」
「そうでした。」

えへへ、と笑う私の身体を軽々と抱き上げて、彼はそのままベッドへと向かう。
どさりと下ろされて、背中に柔らかいシーツ、目の前には愛しい人。
私たちは目を合わせ、そしてまたキスをした。





    end


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