浅い夢
□春
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「春です! 春!
待ちにまった春だよ!!」
一人声をあげて高らかに笑う。
「…いいからもう少し静かにしろよ。」
キルアがポンポンと軽く名無しさんの頭を叩く。
だが名無しさんはその手を払いのけ、
さらに声を大きくして
キルアの耳元で叫んだ。
「春だよ! 静かになんかしてらんないから!」
一人でピョコピョコと跳ねるようにして歩く。
キルアはその様子を見て面倒くさそうに欠伸をして少し微笑んだ。
そのキルアを名無しさんは見逃さず、
じっとキルアを見つめた。
「…今… 笑った?」
少し顔を引きつらせて名無しさんは言う。
( おお 怒ってる怒ってる )
とキルアは心の中でニヤニヤ。
すると、名無しさんはふんっと軽く鼻をならしてそっぽを向いてしまった。
多分顔には出なかったが、
名無しさんの問いかけに何も言わずにいたのが気に入らなかったらしい。