文章2

□夜道で
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「ねぇ…あなた、あなたはなんで生きているの?」



草木も眠る丑三つ時
何もなくたって薄気味悪いそんな時間に、俺様はそいつに出会ってしまった

流れる黒髪
絹のような白い肌
吸い込まれそうな瞳

近頃騒がれている亡霊だ



「俺様が生きている理由ってこと?」

「そう…。あなたの生きる意味。」



なんでも、本能寺の変が起きて一月ほどしてから現れるようになったらしい
魔王に殺された町娘だとか、はたまた明智光秀の妾だとか噂されているが、これは違う
コレはどう見ても、魔王の妹…お市だ



「…あんまり、ふかく考えたことないから解んないかな。」



噂が本当ならば、真実を答えてはいけない



「そう…、あなたも市と同じ……空っぽなのね。」



『真実を話せば、かならずそれを壊される。』

どうやらこの人形は、自分の仲間を探しているらしいのだ
生きている意味を答えられた人間は、その意味を壊される
そうすれば、仲間が増える
まったく、なんとも自己中心的な考えだ



「じゃぁ、俺様はもう帰っていいかな?」

「えぇ、いいわ。あなたには帰る家があるのだもの。」



『じゃぁ、あんたも早く帰りなね』と、上辺だけの言葉を残して俺様はまた歩き出した
後に聞こえたすすり泣く声は、聞こえないものと決め込んで








((振り返ってはいけない))
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