文章1

□one's moon
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「ねぇ、鬼の旦那。」






それは、甘い夜を過ごしたはずの2人には、あまりにもよそよそしい呼び名だった。


別に佐助はそうは思っていないだろうが、元親はそう感じた。


(鬼の旦那ねぇ…。)


「…なんだ?」


しばしの間をおいて、元親は返事を返した。



「旦那はさ、月って飼ったことある?」



「はぁ!?」



突拍子の無い問いだった。




「だからぁ、月だよ月!月を飼ったことある?」

「……ねぇよ。だいたい、月は飼うもんじゃないだろ。」


訝しみながら、元親は答えた。
あたりまえの答えだ。
月を飼うことなんてできるわけがない。




「そう?」



相づちをうつ佐助の声は、ひどく楽しそうな声だった。




「でも、旦那は立派な飼い主だと思うけどなぁ〜。」


あまりに楽しそうな声に今まで下を向いていた元親は佐助を見上げた。
だが、月の逆光をあび、佐助の表情を確かめることは出来なかった。





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