if
□あの人の為に
1ページ/2ページ
「かすがちゃん、剣道部に入ろう。」
小学六年の冬、幼なじみはいきなりそんな事を言い出した
「ね、入ろう。中学生になったらさ。」
「何でだ?」
「あの人に会えるかもしれないからだよ。」
それを聞いて、はっとしたのをまだ覚えている
私が探している『あの人』は、軍神だったお方だ
そして、こよなく居合いを愛していた
居合いは剣道に通じている
もしかしたら、今も剣を続けているかもしれない
しかし、そこで考えは遣えた
「おまえは?おまえの待ち人は剣道じゃ無いんじゃないか…?」
そうだ、幼なじみの『あの人』は剣じゃない、槍だ
「うんうん、剣道なの」
「何故だ?まだ薙刀とかの方が…」
「いや、剣道なの。」
幼なじみは大きく首をふり、ニコリと笑って見せた
「だって旦那は剣も好きだったし!」
「しかし…」
「…それにね!」
いつまでも納得しない私に、少し声を強めて続けた
「『あの人』には、俺なんかよりずっと待ち望んでる人がいるから…!」
「………独眼竜…。」
幼なじみの作った笑顔を見て、
その単語は、自然と私の口から零れていった
「そう…、独眼竜は、剣だよ………。」
寂しさを押し潰した顔で、幼なじみは微笑んだ
私…、俺は、こいつの待ち人に出会えたら、殴ってやる事を心の中で決めた
(こいつに寂しい思いをさせるヤツは、許せない。たとえ、こいつの大切な人でも・・・)