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□マフラー
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「………っ!」

「うぁ…寒!」



冷たい風が部活で疲れた体に叩きつけられた
晴れた日が続き、梅の花が咲いて暖かい風が吹き、春が訪れを感じてコートともおさらばしたのがつい一週間前
春の陽気はどこまでも気まぐれらしく、強い風だけを残してどこかに行ってしまった



「ありえない!せっかく春物のジャケット出したのに!」

「お前は気が早すぎるんだ。」



寒さに耐えながら口からでた言葉は、横を歩く昔馴染みによってさえぎられる


(くそ〜、女の子体は昔に比べてか弱いんだぞ〜!)


そんな相手への恨み言は空気に触れることなく飲み込んだ
そんな事はコイツには解りきったことだ
軽く流されるに決まっている



「…………。」

「…………?」



フと気がついた
さっきから昔馴染みがまったく話そうとしない
普段からあんまりおしゃべりな訳でもないが、今日は静かすぎるほど静かだった


(………!)


不思議に思って顔をのぞき込んでみて驚いた
普段から色白の肌が青白くなっている



「な、何人の顔をじっくり見てるんだ!?」

「ふぇ…!……あぁ、ごめん……。」



少し赤くなった顔を見て、寒いだけだと解って少しだけ安心した


(そっか…、かすがちゃんマフラーも手袋もしてないもんね……。)



「……………。」

「…な、何なんだ?何か付いてるのか?」

「え?…別に?」

「じゃぁあまりガン見するな!」

「はぁ〜ぃ。」



そう言えば、かすがちゃんがマフラーを巻いているのを見たことが無かった


(もしかして、持ってないのかな?)



「ふぅ〜ん…。そっかそっか!」

「?…??」



意味が分からないと言う顔をした昔馴染みに思いっきり微笑んで、『何でもないよ!』と言って、その日は分かれた










「で、何だこれは?」

「ふふぅ〜ん、プレゼント♪」

「何でいきなり…」

「寒そうな昔馴染みに俺様から心を込めた手編みマフラー!結構うまいでしょ?」

「…まぁ、な。」

「……。…要らないお節介だった?」

「そんな事はない!…ありがたく貰っとく。」

「えへへ…。」



綺麗な金髪に合わせて作った薄い水色のマフラー
少しだけこいつの『あの人』を意識したりした




次の日から、かすがちゃんの首筋は寒くなることは無くなりましたとさ♪




『かすがちゃん似合う〜♪』
『う、煩い!仕方ないから使ってやってるんだ!』
『えへへ〜。』
『…コレをやる。』
『え?カチューシャ?』
『お返しだ…。』
『…!ありがと!』
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