カードファイトヴァンガード 短編
□カトルナイツの出会い〜ネーヴ〜
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ネーヴは騒動から数日後、森で仕事をしていた。あの時一体なにが起こったのか、未だにわからない。
しかし、漠然と争いの雰囲気を感じた。あのままでは、きっと国は再び混乱し、争いが起こったに違いなかった。
それが唐突に終わったのは、なぜだったのだろう。争いは容易に消えるものではない。誰かが終わらせるものだ。
だとしたら、あの戦いも終わらせた誰かがいたはずなのだ。
「すいません、フィリップ・ネーヴさんですか?」
後ろから、ふいに声を掛けられた。ネーヴは驚いてとっさに臨戦態勢に入るが、振り向いてその人物を確認し、二重に驚いた。
それは、ネーヴがいつも想定している、森を荒らすハンターなどではなかった。
それは、華奢な少年だった。
「あ、あの、すいません僕は味方です!」
少年は臨戦態勢を解かないネーヴが恐ろしく見えたのか、あわあわと両手を上げた。
その姿が友人にそっくりで、ネーヴはなんだか親近感がわいた。
「いや、こちらこそすまなかった。道に迷ったのか?良かったら出口まで案内するが」
「あ、いえ。その、あなたに会うために来ました」
「俺に?」
「はい。僕の話を聞いてもらえますか」
「……ちょうど俺も休憩時間だ。茶くらいなら淹れよう」
二人はネーヴのテントまで行き、倒木に腰を掛けた。少年はネーヴの淹れたお茶をお礼を言いながら一口飲んだ。
「突然すいません。僕は先導アイチといいます」
「聞いたことがあるな。……確か、アジアサーキットのチャンピオンか」
少年は照れたように笑った。
「突然こんな風に来てしまってすいません。人からここにいると聞いたので」
「構わん。しかし、俺にわざわざ話とはなんだ?」
少年……先導アイチは語り始めた。
数日前に起きた争いの真実を。
そして、自分がこれからしようとしていることを。
「リンクジョーカー……それがあの争いの原因だったのか。
そして、それを倒したのがアイチ殿だということだな?」
「はい」
先導アイチは決意のこもった表情で告げた。
「ネーヴさん、カトルナイツとして僕を守ってもらえませんか。この世界に再び争いを起こさないために」
アイチは無意識なのだろうが、その言葉はネーヴの胸に響いた。
ネーヴが一番に恐れているのは争いが起こること。そして、友を失うこと。
この少年を守ることで、この世界に起こる争いを未然に防げるのだ。
それは、国と友を守ることと同義だ。
そしてなにより、国と友を救ってくれたこの救世主に、今度は自分が恩返しできるのではないか。
この少年に比べて、自分はなんと無力だったか。この少年がいなければ今自分はこうしていられなかったかもしれないのだ。
なにより、そのために全てを捨てたこの少年のためになにかしたいと思った。
「受けよう、アイチ殿。カトルナイツとして眠りを守ることを、約束する」
「ありがとうございます」
握手をした。想像していたよりも小さな手だった。
この幼くも勇敢な戦士を、今度は自分が守らなくてはいけない。
この方と志が共にある限り、この約束が違えられることはないだろう。
たとえ、それで今までのものを捨てたとしても後悔はない。素直にそう思えた。
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