カードファイトヴァンガード 短編

□届かなかった別れの言葉
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気づいたとき、櫂は闇の中にいた。
真っ暗でなにも見えないというのに、自らの体だけははっきりと確認できた。
しかしそれ以外はなにもなくて、取り囲む闇がいつ自分に鎌首をもたげて覆い尽くしてしまうのかと、恐怖すら覚えてしまう。


ほかになにか、誰かいないのかと、無意識に当たりを見回した。

すると、明後日の方向から強い光が差し込んできた。いや、強いだけではなく、とても優しく毅然とした光だった。

ハッと目を奪われてしまいそうな。
周りを明るく照らし、守る。そんな光。


それを放っているのは親友である、一人の少年。
彼は真っ直ぐ、闇の先へ歩いていく。まるで恐れなど知らないように。


自分などは、すべてが無に帰してしまいそうな闇に、足がすくみそうだというのに。


「アイチ!」

櫂は叫んだ。しかし、アイチに反応はない。ただひたすら、前を歩いていく。


「どこへいく!まて、アイチ!」


その背中に嫌な予感がして、櫂は必死にアイチに駆け寄ろうとした。
しかし、アイチに追いつくことも、止めることもできない。

走れば走るほど、アイチの背中は遠のくばかり。


もう走れなくなって、ついに足を止めると、アイチはふいに立ち止まった。


そして、目線だけ後ろに寄越す。
その表情にあるのは、悲哀。

「……ーーーー。ーーーー」


「なんだ、なんて言ったんだ!もう一度言ってくれ!」

しかしアイチは、悲しそうに目を細めると、また前を向いて行ってしまう。


途端に闇以上の恐怖が櫂を襲う。
置いて行かれる。

リンクジョーカーの時、お互いを最強で最高のライバルと認め合って戦ったレンとアイチに嫉妬した。
その時感じたものよりも、より強い焦燥と恐怖。


「アイチっ!!」


その瞬間、青い炎が立ち上る。
その炎は櫂の行く手を阻んだ。

「くっ。なんだこれは?!」


『去れ』

声がこだました。


『近づくことは許さない』


「ふざけるな!
アイチっーー!!」


伸ばした手は、空を掴んだ。





《今までありがとう。僕達、これからもずっと友達だよ、櫂くん》



end
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