カードファイトヴァンガード 短編
□日常的なそれ
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櫂は足を止めた。
見やるのは公園だ。そこはカードキャピタルへ行く道の途中にあって、いつも子供がボールや砂場で遊んでいて賑わっている。
いつもならさらっと視線を飛ばして終わりなのだが、今日に限っては見慣れない赤を見つけて足まで止めてしまった。
「レン?」
公園入り口のすぐ横にあるベンチに、長い赤髪の少年がボーッとしながら座っていた。
自らの名前に反応したのか、雀ヶ森レンは櫂のほうをゆっくりと向いた。
「櫂ですか」
若干落胆を込められたのは気のせいか。誰か待っているのだろうか。
「こんなところで何をしている、レン」
「……言いたくありません」
レンはツンとそっぽを向く。櫂は昔を思い出した。そういえば、レンがこんな反応をするのは決まって拗ねている時だ。
「なにを拗ねている?
テツと喧嘩でもしたか?」
言ってから、櫂はその可能性を排除した。
テツがレンを拗ねさせるような喧嘩の仕方をするとは思えないし、レンはテツの言うことならある程度従うので衝突はしないように思う。
「違います」
案の定、レンは否定の言葉を言ったが、それきり黙りだ。
これは重症だな、と櫂は思ってしばらく待ってみる。レンは結構、言うまで待っていれば自分から話したりする。
「アイチが……」
やっとしゃべったので、耳をすませる。