銀魂
□泡沫の記憶2
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「おや、どうしたんですか?」
松陽は傍らにいる子供を見た。ついさっき拾ってきた銀色の髪をした少年。
たどり着いた松陽の家に一向に入ろうとしない。松陽にもらった刀を抱きしめ、敷居を跨ごうとしない。
「さあ、入りましょう?」
「本当にいいの?」
「もちろん。今日から私の家族ですから」
「家族……?」
呟く表情は無い。先ほどからずっと無表情だ。
「そうです。さあ、大丈夫ですよ」
しばらく沈黙した後、おずおずと足を踏み入れた。内心安堵しながら子供を部屋まで案内する。
「ここは?」
「私の部屋ですよ」
「え……」
「これから一緒に住むんですよ。当たり前じゃないですか」
そう言うと子供は目を見開いた。
「いいの、俺なんかと……」
「もちろんですよ。ああ、そうだ。名前がいりますねぇ」
「いらないよ、俺は鬼だもん。それで充分」
松陽は悲しそうに笑った。そしてゆっくりとした動作で子供を抱きしめた。
子供はビクッと震えたがそのままされるままにしていた。
拾った時には刀を向けられたのだからそれと比べれば信用されたのだろうか。
「は、離せ……よ」
(ふむ。そう簡単にはいきませんか)
苦笑しながら体を離す。
「そうですねぇ。どんな名にしましょうか」
目に入るのは柔らかい銀色。
あまり見ることのない色だ。その色のせいで捨てられたのか。この国の人間では有り得ない色のせいで、捨てられ、他の人間からも疎まれたのか。
拾ってまもないが、この子供が自分の銀の髪と赤い瞳を気にしているのはわかった。
けれど。
いつかその人とは違う色の輝きが他の人を照らすことができればいいと思う。
今は疎むその色を、自分をいつかは好きになってくれればよいと思う。
「銀時」
「え?」
きょとんとした子供の頭に手をのせる。
「君の名前は銀時。銀時です」
「ぎんとき?」
頷くと、銀時はうつむいた。
「いい、響きだね」
「では決まりです。さあ銀時まずはご飯にしましょう。戦場後で食べた握り飯以外食べていないのでしょう?
もっと野菜も食べなくてはいけませんよ、銀時」
「う、うん」
銀時は慣れない名前にぎこちなく頷いた。