銀魂
□泡沫の記憶4
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銀時が寺子屋にきてからしばらく経った。銀時は未だにきちんと授業を受けずに寝ている。とんでもないことだ。
休憩時間、昼寝をしている銀時を起こすのが、小太郎はすっかり日課になってしまった。
「銀時、起きろ」
「なんだよ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
驚きを隠しながら言い返す。
見た目は熟睡しているのに答えた銀時の声はしっかりしたものだった。
「寝ていたんじゃなかったのか」
「寝てた。お前が毎日懲りずに大きな足音立てながら来るから目が覚めるの」
「嘘をいうな、そんな大きな足音を立てているつもりないぞ」
そう言うと銀時は呆れたようにため息をつく。
「なんだ?」
「なんでもねーよ」
「そうか、ならさっさと起きて松陽先生の授業を受けるべきだ」
「べつに先生はなんも言ってねぇだろ」
半ば確信を持った言いかただ。そしてそれは当たっている。銀時が寝ていても松陽がなにか言っていたことはなかった。それどころか見守っているようにすら見える。
「それはそうだが……」
「それに、俺は最低限できればいい」
「どうせここにいるなら松陽先生の授業を最後まで受ければいいじゃないか。銀時も先生が好きだからここにいるんだろう?」
「……まあな」
何だかんだ、先生に拾われ一緒に住んでいる銀時が一番先生を慕っている。と自分にはそう見えた。高杉のようにわかりやすくはないが静かにそばに寄り添っている。
「なあ、小太郎」
「なんだ?」
慣れてきたのか、銀時は最近よく名前を呼んでくれる。たまにあの不本意なニックネームを呼ばれたりはするが。
「お前、なんでそんなに必死に勉強するんだ?」
すぐに答えれなくて、息がつまる。