バクマン(長編Tサイドストーリー)
□僕がアシスタントをやめたワケ
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俺が釈然とない表情のまま、なんとか次の原稿にかかっていると、ガチャガチャとドアが開く音がした。
誰だ?服部さんか?
と思っていると、勝手にあがりこんできた人物がスッと部屋に入ってきた。そのまま真っ直ぐエイジの方へ向かう。
え?
お、女の子…?
女の子だよな…?スカート穿いてるし。
中井さんの方をみると、中井さんもポカンとしている。
「エイジくん!エイジくん!!」
謎の女の子は、慣れた様子でエイジを呼ぶ。
「あ、結ちゃん!」
エイジも音楽を止めて、その子に向きなおった。
何者だよ、結ちゃん。
「結ちゃん、どうしたです?」
「うん、どうせまたろくにご飯も食べてないだろうと思って、夕ご飯つくってきたの。お弁当」
「えっ、結ちゃんがつくってきてくれたんです?」
見れば、その結ちゃんとやらは手に大きな紙袋を提げていた。
それを受け取ってさっそく弁当箱を取り出すエイジ。
「せっかくですから、結ちゃんもいっしょに食べましょう」
と言ってから、エイジがおもむろに俺たちの方を向いた。
「二人とも休憩していいですよ。ご飯でも食べてきて下さい」
…。それは俺たちが邪魔だから、メシでも食ってこいということかい!
エイジが俺たちに声をかけると、その少女がびっくりしたようにこちらを向いた。
どうやら、俺たちは完全に彼女のアウト・オブ・眼中だったらしい。
「エイジくんのところに人がいるの珍しいね。お客さん?」
おまけにかなりすっとぼけたことを言っている。
「違います。僕のアシスタントです」
「え、アシスタント?高校生でもアシスタントって雇えるんだ」
「そうみたいですね。僕もはじめて知りました」
「ふ〜ん、アシスタントってもっとベテランの先生が雇うんだと思ってた」
悪かったな。俺たちも好きでやってるわけじゃないぞ、結ちゃん。
「それよりお腹すきましたから、ご飯にしましょう。二人とも早くご飯食べに行ってください」
あからさまに俺らを邪魔者扱いするエイジ。
う〜っ、もう完全に頭に来た。
こんなとここっちからやめてやる!
絶対やめてやるからな!