日出処の天子
□遠乗り
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鳥が鳴いている。
まだ夜が明けきらぬ朝靄の中、厩戸は目を覚ました。
厩戸は寝覚めが良い。意識が浮上すると、すぐに覚醒する。
寝床から起き上がると、寝衣のまま軽くそばの着物を肩にかけ、部屋の外に出て空を眺めた。
このところ、ずっとぐずついた天気が続いていた。どしゃぶりの雨が降るわけではないが、からっと晴れるわけではない。別に湿り気を含んだ大気が特別嫌いというわけではないが、こう続くと何となくうっとおしくなってくる。
今日は久しぶりに、日輪の機嫌もよさそうだった。
(今日は、遠乗りにでも行くか)
次第に明るくなってくる山々を眺めながら、厩戸にしては珍しく外に出る気になっていた。