多重トリップ過去編


□戦闘は魔法要らずで半殺し
2ページ/2ページ


トロールとの戦闘の後、スネイプ教授につれてかれたことをハリー達から聞いたのか、ハーマイオニーが凄く心配そうな顔で訪ねてきたのは記憶に新しい。全然大丈夫、ってかむしろ嬉しかったので問題なかったよーと笑顔で送り、トロール事件は収束したかのように思えたのだが。

「蛍、大丈夫だったの? トロールと戦ったって聞いて、肝が冷えたよ」

いつものようにアルくんと居た図書室で、(最近では勉強ではなく、趣味の研究に費やしている時間の方が多い)セドリックが声をかけてきた。トロールのことなんて心配してくれていた友人以外ほぼ誰にも話してない筈なのに、セドリックはどこから聞いたんだろう。

「ええと……全然大丈夫よ、ピンピンしてるから心配しないで」
「君が優秀なのは知ってるけど、女の子なんだから無茶しないでくれよ」

笑顔で答えた私に眉根を寄せるセドリックの言葉に、スネイプ教授の言葉とギャロップの言葉を思い出して少し笑った。

「無茶しようとしてしてる訳じゃないんだけど……よく言われるわね、その台詞」
「「…………」」

アルくんとセドリックが何か言いたげな顔で此方を見ていた。いや、だから私が自分から危険に突っ込むなんてことはまずないって。我が身第一だもの。

「それにしても、セドリックはどうしてトロールのこと知ってるの?」

首を傾げる私の疑問に応えたのは、当のセドリックではなく隣のアルくんだった。

「グレンジャーはトロールが来る前から蛍と一緒だったんだろ?蛍に興味を持ったポッターとウィーズリーに事情を話したとしたら、お喋りな赤毛が話を広めるに決まってるだろ」
「……アルくん」
「あいつら、蛍なら一人でもトロールを倒せたんじゃないかとか授業中まで喋ってやがった」

割と辛辣に毒を吐くアルくんである。あれ、キャラ壊れてやしないだろうか。でも確かに一人でトロールを倒せただろう事実があるので苦笑を零すしかない私に、セドリックは「兎に角!」と声をあげた。

「僕は蛍が危ない目にあうのは嫌だからね。ちゃんと覚えておくんだよ」
「あ、うん……ハイ」

ハーマイオニーは私がスネイプ教授に懐いてるのも知ってるし、ハリー達と例え仲良くなってもこれ以上私が物語の主軸に関わることはないと思うのだが。心の中で色々考えながらも返事をした私に、言いたいことを言って満足したのか、優しく頭を撫でてきた後で遠ざかっていくセドリックの背中を見詰めながら、口を開く。

「ただの後輩一人をあんなに心配してくれるなんて、本当に優しいね。セドリック」
「(……鈍感)」

隣で溜め息を吐くアルくんや膝で呆れたように此方を見るアスが何を思っていたかなんて、私は知らない。



***



私が話に関わらないまま、クリスマス休暇が終わり(日本に帰るにしては短すぎるのでホグワーツに残った。アルくんとキリクが一緒だったからほぼ二人と過ごして、ハリーとは話せたけどアルくんはロンのことを毛嫌いしてたから彼とはあまり話せなかった)、テストが終わり(なんだかハリーたちは私に手助けをして欲しそうだったけどハーマイオニーが「だめよ!蛍はスネイプ教授に憧れていて仲がいいのよ!?蛍に真実なんて話せないわ!」としきりに二人を止めていてくれたおかげで関わらずに済んだ)、一年目が終了しようとしていた。テスト結果が張り出されているらしく、テンションの高いティナと一緒に見に行くと恐れ多くも学年トップをいただいていた。ざわざわとした喧騒の中、ロランの「どうやったら100点満点のテストで280点取れるんだよ……」という呟きをスルーし(魔法の試験って面白すぎて記述で色んな考察しまくったらこうなっただけだけど)、ティナの「やっぱりね」という声にはてなを浮かべつつ、名前を呼ばれて振り返る。

「ハーマイオニー」
「蛍、おめでとう! 次は負けないわよ!」

キラキラした笑顔で言ってくれる彼女は、私に次いで二番である。アルくんもキリクも六位までに入っているのだから、私の周りはレベルが高いと思う。

「蛍、流石だね。君が首席だと思ってたよ」

わざわざお祝いを言ってくれたのはセドリックだ。そういう彼も、三年の首席なのだから、流石としか言いようがないのだが。

「それにしてもおしいね、レイブンクローはクィディッチさえ強ければ寮杯を取れただろうに」

記憶にある点数よりは稼いだが、やっぱりトップはスリザリンである。アルくんはどうでもよさそうな顔をしていたが、大広間を覆うグリーンとシルバーに、がっかりムードが漂う。そんな皆に対して、私は笑顔で口を開いた。

「そんな落ち込まないで、皆。寮杯は最後まで分からないよ。駆け込みで点数が入るかもしれないからね」

不思議と高揚した気分で言って、鮮やかに色を帰る大広間を楽しく眺めていた。何はともあれ、一年目の終了である。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ