多重トリップ過去編


□シンデレラ・ナイト
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「代表選手はこちらへ!」

生徒達が集まってきた頃にマクゴナガル先生の声が響き、合流していたキリク・ルーナ、アルくん・ティナと別れてドアの脇の待機スペースまで移動する。道を避けてくれた彼らに礼を言うと、真っ赤になったりにっこりしながらどういたしまして、と言ってくれた。

「はあい、チョウ」
「蛍!」
「良かったわね、ハリー」

レイブンクローのクィディッチチーム所属のシーカー、チョウ・チャンを念願叶ってパートナーに出来た喜びでふわふわしているハリーに小さく話しかければ、一瞬で我に返ったのか朱くなった後それでも嬉しそうに「ありがとう」と呟いた。チョウも嬉しそうなのでニコニコ笑っていれば、ハリーが「実はロンのことなんだけど」と苦笑して唐突に話し出す。

「僕がチョウにOKを貰えたって聞いたら、そうかレイブンクローには蛍が居たじゃないか!って思い出したみたいで。……ロン、蛍がセドリックと付き合ってること知らなかったらしい」
「えっ!? ホグワーツに二人が付き合ってることを知らない人なんて居たの!?」

チョウがびっくりした顔でマジマジとハリーを見ているが、ロンは多分フレッドとジョージによる情報操作で騙されていたのではないかと思われる。でも確かに細々と話題にされているところを見たことはあるが、ハリー並みに有名でもなければそこまで噂になっているつもりもなかったので一応セドリックと顔を見合わせてみる。……苦笑しているだけの彼の表情からはまるで真意が掴めなかったが。そのまま話題を流すことにして、目下気になる懸念事項を解決しようと口を開いた。

「……ロン、誰かパートナー見つかったの?」
「それが蛍のこと聞いたらもうすっかり投げやりになっちゃって。どうせハーマイオニーも一人なんだって独りで行っちゃったんだよね」
「あら? ハーマイオニーは一人じゃないわよ、だって……」
「今晩は、ハリー! 今晩は、蛍!」

クラムの名前を挙げる前に、本人達の登場だった。唖然とするハリーの前で、ハーマイオニーは笑顔で「セドリックもチョウも今晩は」と挨拶をしている。

「ハーマイオニー、とっても可愛いわ!」
「ありがとう、今夜はちょっと頑張っちゃった! 蛍も可愛いし凄く綺麗よ!」

少々はしゃいでにっこりするハーマイオニーは本当に可愛かった。過ぎる人一人一人がその姿に驚いている気持ちも分かる。分かるが女の子は化けるものなんだから、と資質に気付かない面々には苦笑するしかない。クラムは本当に良い目をしている。

「日比野、ありがとう、お陰で彼女を誘うことが出来た」
「ううん、私は何もしていないわ。クラムが頑張ったからよ」

親しげに話す言葉を周りがちゃんと理解することは出来ないだろうが、ハリーやチョウが驚きに目を見開いて、今までパートナーであるロジャー・デイビースとずっと話していたフラー・デラクールが憎々しげに視線を送ってきたのだけは気配で分かった。後者に至っては何故睨まれたのかすら分からなかったが。

「蛍」

自然と差し出されるセドリックの手を取って生徒の集まった会場へと歩を進める。視線が集まったことに目の前のハリーの肩が跳ねるのを確認してしまい柔く微笑む。先生方とついたテーブルでは言った料理が出てくる仕組みになっているようで、試しに言ってみたら日本料理もちゃんと出て来てびっくりした。ちらりと此方を見たセドリックに一口食べさせて見ると、咀嚼した後に一言。

「ん、凄い、本当にちゃんと日本料理だ。……でも蛍が作ったものには適わないね」

ちょっと朱くなった私のすぐ近くに座っていたチョウが、どこの夫婦よ、と静かに突っ込んでいたのが印象的だ。……なんというか、本当すみません。

「クラムは楽しそうだけどデラクールはホグワーツの飾り付けが不満みたいだね」

話が盛り上がっている面々を見ながら、私達は穏やかに食事を続ける。妖女シスターズが登場し灯りが消えると、いよいよ出番が到来したということで。

「蛍、そういえばダンスは出来る?」
「それ今聞くの? 一応一通りは習ったから大丈夫だと思うけど」

眞魔国に居た頃に勉強の一環としてダンスも教えてもらっていた。ギュンターが汁を吹くので先生はもっぱらグウェンかコンラートだったが。

「なら良かった。先生役の人が羨ましいけどね」
「……公の場で踊るのはこれが初めてだから。ある意味ちゃんとセドリックが最初よ」
「ん? 僕の言いたいこと、よく分かったね?」
「、まあ」

同じものを同じタイミングで贈るくらい、通じ合ってるもの、私達。
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