多重トリップ


□終わってなかった連鎖の続投
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放課後になって、ドリンクも洗濯も人数が居る分結構な量だったから多重影分身+結界有効活用で凄い勢いでサポート終わらせたと思う。むしろ振り向いた瞬間にボールとかタオルとかドリンクとか置いてあるのって不気味だよね。説明だけは跡部くんから行ってるはずだけど、どう受け止められてるのか謎な分アレだ。出て行き難い。

「なー今日すっげぇ練習やりやすかったんだけど、跡部なんか導入したのか?」
「アーン?」
「せやな、欲しい時に気ぃついたらタオルやら飲み物やら置いてあって、めっちゃ助かったわ」
「…そうか。だがお前ら、それは機械でも何でもねェ、新しく入ったマネジの仕業だ」

…仕業って。なんつー言い草だ。てか人の手でやってるって説明もしてなかったのかよ…まあザワッとはしてても(「宍戸さん、聞きました?!マネージャーさんのおかげだったんですね!」「っ、気付けなかったとは、激ダサだぜ」)あんま嫌悪感抱かれてないならいいけど。

「っつー訳で、とりあえず紹介する。もうファンも帰ったし姿見せても大丈夫だろ。日比野」

呼ばれたから一応木からぶら下がって下に顔を出してみた。最初に気付いたのは二年生レギュラーの鳳くんだった。…背丈の関係上、目が合っただけなんだけど。このままでいても自己紹介出来そうもないので(なにせ鳳くん以外頭にはてなを浮かべてて気付いてすらいない)飛び降りてみる。ビクッて驚いてるのがさっき喋ってたダブルスコンビ向日くんと忍足くん。ポッカーンと口を開けているのが宍戸くんで表情を変えずに心拍数が上がってるのが樺地くんと日吉くん、で、呆れているのが我らが跡部部長だ。

「日比野…普通に出て来い、普通に」
「…なんだか、忍者みたいな方ですね」

気付いていた分誰よりも立ち直りが早かった鳳くんがそっと呟く。何よりも私の本質を掴むその台詞に心の中で少し笑って、表には出さないままに頭を下げる。

「氷帝学園中等部三年C組日比野蛍です。マネージャーやることになりましたが基本視界に入らないと思うので気にせずテニスを続けて下さい」
「…同じクラス!?」

そんな落ち着き払った彼の隣では宍戸くんが驚愕の目を向けている。そういえばクラスに2人テニス部レギュラーがいたんだっけか。

「覚えてなくとも無理はないと思います。クラスでは多分この格好ですから」

言って即座に眼鏡+2つ結びの大人しめ普通を体現する女子になる。いやクラスでも幻覚作ってどっか行ってたりするから本人率低いけど。

「…お前普段その格好してたのか」

見覚えがあったらしい跡部くんが呟くが、そう簡単には尻尾を出してあげない。

「移動の時はまた別の格好だよ」
「…チッ」

…舌打ちされる意味は分からないが。

「あー、見たこと、ある…そうか、お前が日比野だったのか…うわ、同じクラスなのに気付かなかったとか激ダサだぜ…」

不遜な態度の跡部くんとは違い、宍戸くんは純粋に申し訳なさを感じているらしく、むしろこっちが可哀想になってくる。

「いいんですよ宍戸くん、なるべく目立たず、印象に残らないようにしているので…逆に覚えられている方が驚きです」
「いや、でもお前、見えない所でよくクラスの雑事とかやってくれてるだろう…ありがとうな」

おお、びっくりした。元が優等生気質だったからか、無意識に体が動いてしまう時があるのだ。見られて、且つ覚えていたなんて彼は優しい人なのだろう。

「いいえ、こちらこそ、気付いていただいてありがとうございます」

ほわっと心が温かくなって、この世界に来てから初めて笑った。社交辞令でも愛想笑いでもない、心からの笑顔だ。

「(!、笑った)」
「(笑いましたね…わ、凄く可愛らしく笑う方だ)」
「(無表情しか出来ないのかと思ったぜ)」
「(えろう可愛いお嬢ちゃんやなあ…同い年やけど)」
「…なんだ、そんな顔も出来るんじゃねぇか」

みんなの空気が変わったから何か思ったのは分かったけど、跡部くんは直球過ぎると思う。

「今のは対宍戸くん、優しい彼への笑顔だから。そんな顔も飛び出すんじゃない?」

私は基本的に流され体質なのだ。だから一緒に居られる人や対面している人につられる部分がある。まああまりに性悪な人には合わせることすらしないが。

「…つまりなんだ、俺様は優しくないと」
「え、そんなこと言ってないわ。跡部くんは誠実なリーダーだと思うけど」

まあ宍戸くんとタイプは大分違うだろうが。跡部くんは答えがお気に召したのか、フフンと笑った。いや、そんなドヤ顔しなくても誰も羨ましがったりしないと思うぞ。

「…なんや2人仲ええな」
「つーかあの跡部に物怖じせず意見を述べる女子初めて見た」
「…今日が初対面だけど」
『えっ!?』

何故そこで驚かれたし。そして何故跡部くんはニヤニヤするし。

「…ま、俺様と蛍の仲だからな」
「“やだ景吾、みんなの前ではやめてって言ったじゃない”」
「…」
「…清々しいほどの棒読みやな」

ススっと寄ってきた跡部くんを避けながら言うと、微妙な空気が流れる。いやここでドッと笑われても困るっちゃあ困るが。

「まあいいや、顔合わせは済んだんだよね?私帰るけどいい?戸締まりまでした方がいい?」
「…いや、着替えてから俺が締める。女に最後まで残らせらんねえからな」
「あはー、ありがとう跡部くん」

夜目が効くし暗くなる分には平気なんだけどね。

「ではまた明日、朝練頑張ってね」

私も来るけど姿を見せないだろうから挨拶はこれで間違ってない。消えるようにフェードアウトした私に、彼らがどんな印象を抱いたかなんて興味はない。私は頼まれた忍務をこなすだけ、忍務に感情はいらないから。



(なんちゅーか…ものごっつおもろい嬢ちゃんやったなあ)
(宍戸さん、同じクラスなのが羨ましいです)
(あー、ジローも一緒だけどな)
((…ジローは十中八九彼女のこと知らないだろうな))






***
テニス!私は特に氷帝贔屓というわけではないのですが(←)テニス部員の多さと金持ち比率でえげつない虐めしそうな氷帝に。傍観でもなければ嫌われでも愛されでもない…と思う。三郎メインで立海も出るよ!な予定。唯単に忍者スキル活用しまくるマネが見たかっただけともいう。しかし2年メンツが鳳以外喋ってない罠wジローは部活自体不参加だよ!時系列とかは気にしない感じで。(幸村も出ます)夢主は青学メンバーと主人公見れば「あー、ジャンプのテニス漫画だ?」くらいになると思う。恥ずかしい略称は思い出せない。
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