中編・短編


□誓います愛を
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生まれて直してから暫く経って、私が某児童書の額に傷跡のある主人公の愛情深いお母さんキャラに成っているのだと認識した時、私は死なないためにまずは出来るところから変えてみようと努力した。

それは姉であるペチュニアとの関係であり、前世では姉より出来のいい、生意気で可愛くない妹だった私はどうすればいいのかすぐに分かった。
ズバリ、“彼女より出来ないところを多く持つべし!”。姉妹って、同性だし年が近いと尚更比べられがちだし、異性の兄弟だと許されるようなちょっとした行為が許せなかったりするものなのよね。
リリー・エヴァンズは容姿にも恵まれていて、ともすればドジっ子ポジでも狙ってんじゃないのアアン!?ってなりそうな時もチュニーに甘えることで乗り切った。
曰く、“姉には頼ることで自分が下であることを認めているアピールをするべし!”。庇護対象として、私が守ってやらなきゃって認識を持たせれば、結構何やっても許される感じにはなるのよね。
ズルイかもしれないけどそもそもキャラに成っているっていう微妙な位置で、唯一無二の姉妹とギスギスしたくなんてないし、親にも贔屓とかされたくないし。
元が平凡代表の日本人女子としては、魔法が使えなくたって科学技術を発展させてきたマグルも十分凄いのが分かってるから奢ることも魔法を押し付けることもやらないし。

だから私はホグワーツ魔法魔術学校の成績こそいいものの、マグルの学校ではそこそこ平均を狙って点数を取っていた。ペチュニアに勉強を教わって、お裁縫とか家事とかも不器用をしっかり演出して“出来なくとも可愛い妹”となることに成功していた。
…まあ料理に関しては、和食で薄味大好きな私が作るものは自然とイギリスでは不味いものとして認識される訳ですが。

そして今現在私は、濃い味に慣れているイギリス人には不評しかもらえない例の手料理を、どういう訳かセブルスに提供していた。

「…無理して食べなくてもいいのよ?」

事の発端は甘いものがそんなに好きではないセブルスに日本式でクッキーを焼いたことだった。それを大層気に入ってくれたらしいセブルスが、「きっとリリーの作るご飯も美味しいんだろう(はにかみ※当社比)」とかいうから調子に乗って作ってみたんだけど、家じゃ懐かしの和食しか作ってないだけあって私の料理は日本仕込みでしかない。いくらセブルスでも味がしない、とかは言われてしまうだろう、とちょっとしょんぼりして進言した私に、セブルスは瞬き多めに此方を向いた。

「…リリーはこれを美味しくないと認識しているのか?」
「え、ううん、私はこれくらいの味付けが好きだけど、皆には味がしないって言われるから…」
「すごく、おいしい」
「!」

パッと顔を上げると、視線を料理に戻して黙々と食べるセブルスがいた。いつもより早いペースで口元に運ばれるその口角は上がっているし、心なしか頬が赤らんで、目じりも下がっている。
本当に、セブルスは美味しいと思ってくれている?私の料理を、心から?

「リリーの作った料理を毎日食べられるヤツは、幸せだろうな」

そのままほわりと表情を緩めたセブルスに我慢ならず、私は横から彼に抱き付いた。吃驚されたけど構うものか。この衝動は抑えきれないし、もう押さえ込むものでもないと思った。

「──なっ!?リリー!?」
「セブ……っ、だいすき、だいすきよセブルス」

ぎゅうっと想いを込めて抱きしめると、腕の中のセブルスは硬直する。戯れの“好き”なんて今まで何回言って来たか分らないけれど、ちゃんと伝わる様にこの言葉には真剣さを目一杯乗せた。周りと比べての恋愛方面で、自分になかなか自信を持てない彼が、迷わなくて済むように。

「私が、貴方を幸せにしたいわ…」

原作で、涙を流しながら彼女を思って死んでいった彼を心底愛おしいと思っていた。いじらしいくらいに一途な彼を、幸せにして欲しかったと本の向こうに叫んでいた。今その権利が私にあるというのなら、全力でもって私は、私だけのセブルスを幸せにしたい。死亡フラグを叩き割りたいとか思う以前に、私は彼が大好きだから。

「…リリーは、本当に僕の憧れだ」
「セブ?」
「僕が言いたくて、ずっと言えなかった言葉を、いとも簡単に…先に言ってしまうんだから」

優しく、少し名残惜しげに、だけど決意したように力強く──そっと身体を離した彼は、通常張り付けている皮肉染みた表情なんて微塵も感じさせない柔らかな顔で、綺麗に微笑んだ。

「リリー、君と、一生一緒に居たい。ずっと、僕の隣に居て欲しい」
「ええ…!ええ、セブルス…っ」

ホグワーツの厨房の中で、今まで空気を読んでひっそりとしていたハウスエルフたちがわーわー拍手をして花束を持ってきてくれる。口々に言われる「おめでとう」を背景に、私は世界一の幸せを噛みしめた。





***

セブのプロポーズとリリーのOKはハウスエルフ→ダンブルドア→教員と広まってから、スラグホーン辺りが「めでたいめでたい」とか言って生徒に話すことで全生徒が知ることになる。ジェームズとか未練たらたらだけど幸せそうなリリーを前に何も言えない。ラブラブな二人を見て感じる胸の痛みが甘美だとか思っちゃうくらいにM化している。(…)
同じく幸せそうなセブルス+スリザリンとグリフィンドールのカップル誕生にホグワーツも和やかムードに包まれて悪戯仕掛け人たちも認識を改めたり、とある兄弟が仲直りのための布石を得たり色々ハッピーエンドのため出来そうな気がする。
ニヤニヤしながら書いた!楽しかったです!笑

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